公開日:2025.06.11 最終更新日:2025.06.12

パニック障害(パニック症)とは?症状・原因・治療法を医師が解説

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パニック障害(パニック症)とは?症状・原因・治療法を医師が解説
このコラムのまとめ
パニック障害は、予期しない激しい不安発作(動悸、息苦しさ、めまいなど)を繰り返す精神疾患です。発作への強い恐怖から外出や人混みを避けるようになることもあります。原因はストレスや脳内の神経伝達物質の異常とされ、薬物療法や認知行動療法によって改善が可能です。

パニック障害とは

パニック障害(パニック症)は、突然発生する強い不安や恐怖により、パニック発作が繰り返し起こる精神疾患です。発作中は死ぬかもしれないという強い恐怖感に襲われますが、実際には命に危険はありません。

パニック障害は単なる「弱さ」ではなく、脳内の神経伝達物質のバランスが乱れることで起こる病気です。適切な治療で症状は改善できます。

精神科医

パニック障害は不安障害と呼ばれる精神障害の一つで、発作が起こると呼吸が苦しくなったりめまいが出たりします。症状は数分から数十分程度で収まりますが、突然起こる発作の恐怖から外出を避けるようになることもあります。

パニック発作の特徴

パニック発作は以下のような特徴があります。

  • 予測できないタイミングで突然発生する
  • 症状は急激に強まり、10分ほどでピークを迎える
  • 発作中は「このまま死ぬかもしれない」という恐怖感を感じる
  • リラックスしているときにも発作が起こることがある

パニック障害に多い症状

パニック障害では、突然起こる強い恐怖や不快感により、以下の症状が4つ以上起こるとされています。

  • 動悸、汗、体の震え
  • 息苦しさ、窒息感
  • 胸の痛み、吐き気
  • めまい、しびれ
  • 現実感の喪失
  • 発狂や死への恐怖

これらの身体症状は実際の体の病気と誤解されやすく、心筋梗塞などと間違われることもありますが、身体的な検査では異常が見つからないことが特徴です。

発作が起きたとき、本当に死ぬかと思いました。でも病院で「命に危険はない」と説明を受け、少し安心できました。治療を始めてからは、徐々に症状が改善していきました。

パニック障害の患者

放置すると生活に大きな支障をきたすので、心療内科や精神科での適切な治療が重要です。パニック障害は適切な治療で症状を緩和することができます。一人で悩まず、専門医に相談することが回復への第一歩です。

パニック障害の治療法

パニック障害は適切な治療を受けることで症状が和らぎ、多くの人が回復に向かうことができます。治療法には主に「薬物療法」と「精神療法」があり、それぞれの患者さんの状態に合わせて組み合わせながら進めていきます。

パニック障害の治療は、薬だけでなく心理的アプローチも組み合わせることで効果が高まります。早期に治療を始めることで回復の可能性が高まります。

精神科医

薬物療法

パニック障害の薬物療法では、主に抗うつ薬や抗不安薬が使用されます。

  • 抗うつ薬(SSRI):セロトニンの働きを調整し、パニック発作だけでなく予期不安や広場恐怖にも効果があります。
  • 抗不安薬:即効性があり、不安感を素早く緩和できますが、依存性があるため基本的に短期間での使用が推奨されています。

薬物療法において重要なのは、自己判断で服薬を中止しないことです。症状が改善しても、医師の指示なく突然薬を止めると症状が再発したり、離脱症状が出たりする可能性があります。

精神療法

薬物療法と並行して、心理的アプローチも重要な治療法となります。特に効果が高いとされているのは認知行動療法です。

  • 認知行動療法:不安を引き起こす考え方や行動パターンを見直し、恐怖に至るまでの思考を変えていきます。
  • 暴露療法:パニック発作を恐れて避けていた状況に段階的に触れることで、不安に慣れていきます。

最初は薬だけでしたが、認知行動療法を取り入れてからは自分でも不安をコントロールできるようになりました。「この症状は命に関わるものではない」と理解できるようになり、発作が起きても対処できるようになりました。

治療中の患者

生活習慣の改善

治療と並行して、規則正しい睡眠習慣、バランスの良い食事、適度な運動、カフェインやアルコールの摂取制限など、生活習慣の改善もパニック障害の症状緩和に役立ちます。特に十分な睡眠を確保することは、症状管理において非常に重要です。

パニック発作が起きたときの対処法

パニック発作はとても怖い体験ですが、適切な対処法を知っていれば症状を和らげることができます。発作が起きたときに自分自身で行える対処法と、周囲の人ができるサポート方法についてご紹介します。

パニック発作は命に関わるものではありませんが、本人にとっては死ぬほどの恐怖を感じる体験です。発作時の正しい対処法を知っておくことで、不安を軽減できます。

精神科医

呼吸法と注意の切り替え方

パニック発作が起きたとき、まずは呼吸を整えることが重要です。過呼吸になることが多いため、ゆっくりとした深い呼吸を心がけましょう。

  • 腹式呼吸法:息をゆっくり鼻から吸い(3秒)、口からさらにゆっくり吐く(5秒)を繰り返します。
  • 注意の切り替え:頭の中で数を数える、周囲の物の色や形に意識を向ける、好きな曲を思い浮かべるなど、身体の感覚から意識をそらします。

電車でパニック発作が起きたとき、「吐く息を長くする」という呼吸法を試したら少し落ち着きました。水を持ち歩き、発作の予兆を感じたら一口飲むようにしています。

パニック障害当事者

周囲の人ができるサポート

家族や友人、同僚など周囲の人がパニック発作を起こしている人を見かけたら、以下のようなサポートが役立ちます。

  • 落ち着いた声で話しかけ、安心感を与える
  • 「大丈夫、命に危険はないよ」と伝える
  • 呼吸を整えるよう優しく促す
  • 水や静かで落ち着ける場所を提供する
やるべきこと 避けるべきこと
・落ち着いた態度で接する
・安心感を与える言葉をかける
・「気にしすぎだ」と否定する
・「落ち着け」と命令口調で言う

パニック発作はつらい体験ですが、適切な対処法を身につけ、必要な治療を受けることで、症状を軽減し、発作と上手に付き合っていくことが可能です。

パニック障害と仕事・日常生活

パニック障害と仕事・日常生活

パニック障害があっても、適切な対処法を身につけ環境を整えることで、仕事や日常生活を続けることは可能です。ここでは、パニック障害と上手に付き合いながら生活を送るためのポイントをご紹介します。

パニック障害と診断されても、すぐに仕事を辞める必要はありません。職場での適切な配慮や働き方の工夫によって、多くの方が仕事を続けることができています。

産業医

仕事と両立するためのポイント

パニック障害があっても仕事を続けるためには、いくつかの工夫が役立ちます。

  • 時差出勤や在宅勤務の活用:混雑した電車やバスでパニック発作が起きやすい方は、ラッシュを避けた時差出勤や在宅勤務が有効です。
  • 職場環境の調整:出入り口に近い席に移動するなど、必要な配慮を検討しましょう。
  • 休憩時間の有効活用:昼休みにリラクゼーション法や呼吸法を実践する時間を作りましょう。
  • 必要な場合は休む勇気を持つ:体調が優れないときは無理をせず、休息をとることも大切です。

家族や職場の理解を得るための伝え方

パニック障害について周囲に理解してもらうことは、適切なサポートを得るために重要です。

  • 信頼できる人から少しずつ伝える:まずは上司や人事、仲の良い同僚など信頼できる人に伝えましょう。
  • 具体的な症状と必要なサポートを伝える:どのような症状があり、どんな配慮があれば働きやすいかを具体的に伝えましょう。

最初は職場に伝えるのが怖かったですが、上司に状況を説明したら予想以上に理解してもらえました。発作時の対応方法も共有していたので、実際に会議中に症状が出たときも慌てず対応してもらえました。

会社員・パニック障害当事者

再発予防のためのセルフケア

パニック障害の症状が和らいでも、再発を防ぐためのセルフケアが重要です。規則正しい生活リズム、ストレスマネジメントの実践、適度な運動の継続、カフェインやアルコールの摂取制限など、日常的なケアを心がけましょう。

よくある質問

パニック障害に関して多くの方が抱える疑問や不安について、よくある質問とその回答をまとめました。疑問点の解消にお役立てください。

パニック障害は完治するの?

パニック障害は適切な治療を受ければ、多くの場合症状の改善が期待できます。完全に症状がなくなるケースもありますが、軽度の症状が残りながらも日常生活に支障がない状態になる方も多いです。

パニック障害は「治る病気」と考えて大丈夫です。適切な治療を受け、生活習慣の改善や対処法を身につけることで、多くの患者さんが症状の軽減を経験します。

精神科医

薬はいつまで飲み続けるべき?

薬の服用期間は症状の重さや改善の度合いによって異なります。一般的には、症状が安定してから約6ヶ月〜1年程度は継続することが推奨されていますが、これは患者さんごとに医師が判断します。

自己判断で急に薬を中止すると、離脱症状が出たり症状が再発したりする可能性があります。

一人で外出できるようになるには?

パニック障害の方が一人で外出できるようになるためには、段階的なアプローチが効果的です。まずは自宅の近所など短い距離から始め、徐々に行動範囲を広げていきましょう。発作が起きた時の呼吸法や気分転換法を事前に練習しておくことも大切です。

最初は家の周りを5分歩くことすら怖かったですが、少しずつ距離を伸ばしていきました。発作が起きても対処できる自信がついてからは、電車に乗って買い物に行けるようになりました。

回復途上の患者

パニック障害は遺伝するの?

パニック障害には遺伝的要素があることが分かっていますが、必ずしも親から子へ直接遺伝するというわけではありません。

家族にパニック障害がある場合、発症リスクは約3〜5倍に高まるという報告がありますが、環境要因も大きく関与しています。適切な環境とセルフケアでリスクを低減できる可能性があります。

パニック障害の主な症状

パニック障害には特徴的な症状があります。主な症状として「パニック発作」「予期不安」「広場恐怖」の3つが挙げられ、これらが組み合わさることで日常生活に支障をきたす状態になります。

パニック障害の症状は人によって現れ方や強さが異なります。症状に心当たりがある方は、早めに専門医に相談することをお勧めします。

精神科医

パニック発作の身体症状と心理症状

パニック発作は、予測できないタイミングで突然起こる強い不安や恐怖の発作です。発作時には身体症状と心理症状の両方が現れます。

主な身体症状には以下のようなものがあります。

  • 動悸・心拍数の増加:激しい動悸を感じます
  • 呼吸困難・息苦しさ:息が吸えない感覚があります
  • めまい・ふらつき:頭が軽くなったような感覚があります
  • 発汗:急に冷や汗が出ることがあります
  • 胸の痛みや不快感:胸が締め付けられるような痛みを感じます

心理症状としては、非現実感、コントロールを失う恐怖、死の恐怖などがあります。

予期不安とは

予期不安とは、パニック発作を経験した後に生じる「また発作が起こるのではないか」という強い不安や恐怖のことです。この不安感は、パニック障害の中核的な症状の一つです。

広場恐怖(場所恐怖)との関連

広場恐怖は、パニック障害の方の約80%以上が経験するといわれている症状です。これは予期不安が高まった結果、特定の場所や状況を避けるようになる状態のことを指します。

最初のパニック発作は買い物中に突然起きました。それからは「また起きるかも」という不安が常につきまとい、電車に乗るのも怖くなりました。

パニック障害当事者

パニック障害になりやすい人の特徴

パニック障害はどのような人にも起こり得る病気ですが、なりやすい性格傾向や特徴があることが知られています。ここでは、パニック障害になりやすいとされる特徴について解説します。

パニック障害は性格的な弱さが原因ではなく、むしろ責任感の強さや誠実さが要因となることもあります。特徴を知ることは予防や対策に役立ちます。

精神科医

性格的な傾向(完璧主義・真面目・繊細など)

パニック障害になりやすい性格的な傾向としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 完璧主義:物事に対して高い基準を持ち、常に完璧を求める傾向がある人は、自分に過度のプレッシャーをかけてしまいがちです。
  • 真面目で責任感が強い:責任感が強く、任された仕事は最後までやり遂げようとする傾向があります。
  • 繊細で感受性が高い:周囲の変化や他者の感情に敏感で、些細なことでも心を動かされやすい特徴があります。
  • 不安や心配が強い:将来のことや起こり得る問題について過度に心配する傾向があります。

私は常に「もっと完璧にできる」と自分を追い込んでいました。気づいたときには心も体も限界でした。「完璧でなくても良い」と考えられるようになって、少しずつ楽になりました。

回復途上の患者

年齢や性別による発症リスクの違い

パニック障害は10代後半から40代の間に発症することが多く、特に20代から30代にかけてのピークがあります。また、女性の方が男性より発症率が高く、男性の約2倍の割合で発症するといわれています。

ストレスに弱い体質との関連性

自律神経の不安定さや過去のトラウマ体験なども、パニック障害の発症リスクを高める要因となることがあります。これらの要因が複合的に組み合わさることで、ストレスに対する脆弱性が高まる可能性があります。

パニック障害の原因

パニック障害の正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、複数の要因が組み合わさって発症すると考えられています。脳の機能異常、心理的要因、環境的要因などが複合的に関わっているとされています。

パニック障害は「気の弱さ」ではなく、脳内の生物学的変化と心理的要因が絡み合った状態です。原因を理解することで、適切な治療法を選択できます。

精神科医

脳内メカニズムと身体的要因

パニック障害の発症には、脳内の特定の領域や神経伝達物質のバランスが関与していると考えられています。

  • 扁桃体の過活動:脳内で恐怖反応を処理する扁桃体が過敏に反応することが、要因の一つと考えられています。
  • 神経伝達物質の不均衡:セロトニンやノルアドレナリン、GABAなどの神経伝達物質のバランスが崩れることも原因とされています。
  • 遺伝的要因:家族にパニック障害の方がいる場合、発症リスクが高まるという研究結果もあります。

心理的・環境的要因

パニック障害の発症には、心理的・環境的要因も大きく関与しています。

  • 慢性的なストレス:長期間にわたる強いストレスは、体内のストレスホルモンのバランスを崩し、脳の機能に影響を与えることがあります。
  • トラウマ体験:事故や災害、虐待など、強いトラウマとなる出来事を経験すると、脳内のストレス反応システムが過敏になることがあります。
  • 大きな環境変化:引っ越し、転職、結婚、出産などの大きな生活環境の変化もストレス要因となることがあります。

ライフスタイルによる影響

睡眠不足や過労、カフェインの過剰摂取、喫煙、アルコールなどの生活習慣も、パニック障害の発症や症状の悪化に影響を与える可能性があります。

パニック発作が起こりやすい状況

パニック発作は予測できないタイミングで突然起こるのが特徴ですが、発作が起きやすい状況やきっかけがあることも知られています。自分のパターンを知ることで、予防や対処がしやすくなります。

パニック発作は「逃げられない」と感じる状況で起こりやすい傾向があります。発作のパターンを知ることで、恐怖心を減らし、対処しやすくなります。

精神科医

閉鎖的な空間や人混み

閉鎖的な空間や人混みは、パニック発作が起きやすい代表的な環境です。「逃げ場がない」「自由に動けない」という感覚が不安を増幅させます。

  • エレベーター:狭い密閉空間で、すぐに脱出できないという特性があります。
  • 混雑した電車やバス:身動きが取れない閉塞感や他者との密接な距離感が不安を高めます。
  • 映画館や劇場:暗い空間で席に縛られる状況が不安を引き起こすことがあります。

リラックス時

興味深いことに、パニック発作はリラックスしているときにも起こることがあります。長期間の緊張やストレスが続いた後、体が緊張から解放される過程で蓄積されていた不安やストレスが一気に放出されることがあります。

初めての発作は満員電車の中でした。突然息ができなくなり、このまま倒れるかと思いました。それ以来、ラッシュ時の電車に乗るのが怖くなりました。

パニック障害当事者

発作の恐怖がよみがえったとき

過去にパニック発作を経験した場所や状況に近づいたとき、その記憶が呼び起こされ、「また発作が起きるのではないか」という予期不安から実際に発作が起こることがあります。

まとめ:パニック障害と上手に付き合うために

パニック障害は決して珍しい病気ではなく、適切な治療と対策によって症状を改善し、日常生活を取り戻すことができます。

パニック障害は「治す」ものであると同時に、「付き合っていく」ものでもあります。症状と上手に付き合う術を身につけることで、充実した生活を送れるようになります。

精神科医

治療の継続と日常的な自己管理を心がけ、必要に応じて家族や周囲の人のサポートを受けながら、少しずつ回復への道を歩んでいきましょう。

パニック障害はあなたの人生のほんの一部分にすぎません。適切な治療と前向きな姿勢があれば、必ず光は見えてきます。

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