公開日:2025.06.13 最終更新日:2025.06.13
社会不安障害(SAD)の人に向いている仕事15選|働き続けるためのコツと対策
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- このコラムのまとめ
- 社会不安障害を持つ人でも無理なく働ける職種は多数あり、接客の少ない仕事や在宅ワークなど、自分の特性に合った環境を選ぶことが重要です。障害者雇用や就労支援サービスの活用も有効で、自分に合った働き方を見つけることで、安心して社会参加が可能になります。
社会不安障害の人に向いている仕事15選
社会不安障害(SAD)を抱えていても、自分に合った仕事を見つけることは十分可能です。ここでは、社会不安障害の特性に配慮した働きやすい職種を15種類紹介します。自分の興味や得意分野と照らし合わせながら、あなたに合った仕事を探してみましょう。
対人接触が少ない仕事
社会不安障害の方にとって、他者との直接的な接触が少ない環境は大きな安心感につながります。以下の仕事は、人との関わりを最小限に抑えながら自分のペースで働ける特徴があります。
- プログラマー・システムエンジニア:コードの作成やシステム開発など、PC作業が中心で個別作業の時間が多い
- 研究職:データ分析や実験など、集中して一人で取り組める作業が主体
- データ入力・事務作業:定型的な作業を黙々と進められる環境が多い
- 警備員(監視業務):建物や施設のセキュリティ確認など、対人接触が限られた業務
- 清掃員:早朝や夜間など人が少ない時間帯に作業をすることが多い
SADと診断されたエンジニア(30代)
定型的な業務が中心の仕事
予測可能な作業内容で、突発的な対応が少ない仕事は、社会不安障害の方に適しています。決まった手順で進められる業務は、緊張や不安を感じにくく、安心して取り組めます。
- 経理・会計:数字を扱う作業が中心で、ルーティンワークが多い
- 図書館司書:書籍の管理や貸出業務など、決まった流れで進行する作業が中心
- 製造業の生産ライン:同じ手順を繰り返す作業が多く、予測しやすい
- 倉庫管理・物流関連:商品の仕分けや在庫管理など、システム化された業務が中心
在宅・リモートで働ける仕事
自宅という安心できる環境で仕事ができれば、通勤によるストレスや職場での対人関係の緊張から解放されます。コロナ禍以降、リモートワークの普及で選択肢が広がっています。
- Webライター・編集者:記事やコンテンツの執筆・編集を自宅で行える
- イラストレーター・デザイナー:イラストやデザインの制作をリモートで完結できる
- 翻訳者:文書の翻訳業務を自宅で行える
- Webディレクター:プロジェクト管理やコンテンツ企画をオンラインで進行
- データアナリスト:データの分析や統計処理をリモートで行える
- 動画編集者:映像素材の編集作業を自宅で完結できる
仕事カテゴリー | メリット | 適性のある人 |
---|---|---|
対人接触が少ない仕事 | 人との関わりによる緊張や不安が最小限 | 集中力があり、一人での作業が得意な人 |
定型的な業務の仕事 | 予測可能性が高く、突発的な対応が少ない | 正確さと丁寧さを持ち、ルーティンを好む人 |
在宅・リモートの仕事 | 通勤ストレスがなく、自分のペースで働ける | 自己管理能力があり、ITスキルを持つ人 |
社会不安障害があっても、自分の強みや特性を活かせる仕事は必ず見つかります。上記の職種はあくまで一例ですが、「人との直接的な交流が少ない」「予測可能な業務内容」「自分のペースで進められる」といった共通点があります。自分の症状の特徴や程度、得意なことを踏まえながら、長く働き続けられる環境を探してみましょう。
社会不安障害のあるオフィスワーカー(20代)
社会不安障害の人が仕事を長く続けるための6つのコツ
社会不安障害を抱えながら仕事を続けることは、日々の挑戦の連続です。しかし、適切な対処法と環境調整があれば、長期的に安定して働き続けることは十分可能です。ここでは、社会不安障害の方が職場で長く活躍するための実践的なコツを6つ紹介します。
適切な治療とカウンセリングを継続する
社会不安障害の症状管理において、専門家による適切なサポートを継続的に受けることは非常に重要です。治療を中断せず、定期的に専門家と状況を共有しましょう。
- 精神科医や心療内科医による薬物療法(SSRIなどの抗うつ薬や抗不安薬)
- 認知行動療法(CBT)などの心理療法による不安への対処スキル向上
- 職場での困りごとを専門家に相談し、具体的なアドバイスを得る
精神科医
上司や同僚に必要な範囲で症状を伝える
自分の状態を適切に伝えることで、職場での理解と配慮を得やすくなります。すべてを開示する必要はありませんが、必要最小限の情報共有が助けになります。
- 信頼できる上司や同僚に、自分がどのような場面で困難を感じるかを具体的に伝える
- 自分の強みや得意な業務についても同時に伝え、バランスのとれた理解を促す
- 必要に応じて「合理的配慮」を要請する(例:電話対応の免除、会議での発表回避など)
自分なりのストレス対処法を複数持つ
職場で不安や緊張が高まったときに、すぐに実践できるリラクゼーション法を身につけておくことが重要です。自分に合った方法を複数用意しておきましょう。
- 呼吸法:3秒かけて鼻から吸い、6秒かけて口からゆっくり吐く深呼吸を5回繰り返す
- 短時間のマインドフルネス:5分間、今この瞬間の感覚に集中する
- 筋肉のリラクゼーション:肩や首の緊張を意識的に解きほぐす
通勤経路や時間帯を工夫する
満員電車や混雑した公共交通機関は、社会不安障害の方にとって大きなストレス源になりがちです。通勤の負担を軽減する工夫を取り入れましょう。
- 混雑時間帯を避けたフレックスタイム制度の活用を検討する
- 可能であれば、徒歩や自転車など自分のペースで通勤できる方法を選ぶ
- リモートワークや在宅勤務の日を設けられないか上司と相談する
社会不安障害と共に働く会社員(40代)
規則正しい生活習慣を維持する
生活リズムの乱れは不安症状を悪化させる要因になります。心身の健康を保つため、基本的な生活習慣を整えることが症状の安定につながります。
- 十分な睡眠時間(7〜8時間)を確保し、毎日同じ時間に起床・就寝する
- バランスの取れた食事を規則正しく摂る(特に朝食を抜かない)
- 適度な運動を習慣化する(ウォーキングやヨガなど負担の少ない運動から始める)
小さな成功体験を積み重ねる
不安を感じる場面に少しずつ挑戦し、成功体験を重ねることで自信を築いていくことが大切です。一度にすべてを克服しようとせず、段階的に取り組みましょう。
- 挑戦しやすい小さな目標を設定する(例:会議で一言だけ発言するなど)
- 成功体験を記録して振り返り、自分の成長を可視化する
- 失敗してもそれを学びの機会と捉え、次の挑戦につなげる
これらのコツは、一度に全てを実践する必要はありません。自分の状況や職場環境に合わせて、取り入れられるものから少しずつ試してみましょう。症状の波があることを受け入れつつ、長期的な視点で職場生活を安定させていくことが大切です。何よりも、自分を責めず、自分のペースで進むことが長く働き続けるための鍵となります。
臨床心理士
社会不安障害の人が活用できる支援制度と機関
社会不安障害を抱えながら働く場合、様々な公的支援や専門機関のサポートを活用することで、職場での困難を軽減できます。ここでは、社会不安障害の方が利用できる主な支援制度や相談機関を紹介します。一人で悩まず、これらのリソースを積極的に活用していきましょう。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、障害のある方が一般企業などへの就職を目指してトレーニングを受けられる福祉サービスです。社会不安障害の方の特性に配慮したサポートを受けることができます。
- 利用期間は基本的に2年間で、その間に就職に必要なスキルを身につける
- コミュニケーションスキルや対人スキルのトレーニング
- ビジネスマナーや専門スキル(PCスキルなど)の習得
- 就職活動のサポート(履歴書作成、面接対策など)
- 就職後の職場定着支援(最長3年間)
利用には市区町村の障害福祉サービスの支給決定が必要です。自己負担は所得に応じて決まりますが、住民税非課税世帯は無料で利用できます。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センター(通称「なかぽつ」)は、障害のある方の就職から職場定着までを一体的にサポートする機関です。全国に330か所以上設置されており、無料で利用できます。
- 就職に向けた準備から職場定着まで、継続的なサポートを提供
- ハローワークなど関係機関と連携した求人情報の提供
- 企業への障害特性の説明や配慮事項の調整
- 生活面(住居、金銭管理など)のサポートも同時に受けられる
ハローワーク(公共職業安定所)
ハローワークには障害のある方のための専門窓口があり、社会不安障害の方も利用できます。専門の担当者が就職まで一貫してサポートしてくれます。
- 障害者専門の職業相談員による相談
- 障害者向け求人情報の提供
- 障害特性に配慮した職業紹介
- トライアル雇用制度の活用(原則3ヶ月の試行雇用)
- 精神障害者雇用トータルサポーターによるサポート
支援機関名 | 主なサポート内容 | 利用条件 |
---|---|---|
就労移行支援事業所 | 就職に向けた訓練、就職活動支援、定着支援 | 障害福祉サービスの支給決定が必要 |
障害者就業・生活支援センター | 就労と生活の一体的支援、定着支援 | 基本的に障害者手帳所持者(相談は誰でも可) |
ハローワーク | 職業相談、職業紹介、求人情報提供 | 誰でも利用可(障害者窓口は診断書などが必要) |
地域障害者職業センター
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営する地域障害者職業センターは、障害のある方への専門的な職業リハビリテーションを提供しています。全国に47か所あり、無料で利用できます。
- 職業評価:適性や能力に合った職業の検討
- 職業準備支援:社会生活技能訓練(SST)などのプログラム提供
- ジョブコーチ支援:職場に専門家が訪問して直接サポート
- リワーク支援:うつ病などで休職中の方の職場復帰支援
支援機関を利用して就職した30代男性
精神障害者保健福祉手帳の活用
社会不安障害の診断を受けた方は、精神障害者保健福祉手帳の取得を検討してみるとよいでしょう。手帳を取得することで、以下のようなメリットがあります。
- 障害者雇用枠での就労機会の拡大
- 所得税や住民税などの税制上の優遇措置
- 公共交通機関の運賃割引(自治体により異なる)
- 各種福祉サービスの利用がスムーズになる
これらの支援機関や制度を利用する際のポイントは、早めに相談することです。症状が重くなってから相談するよりも、軽いうちから支援を受け、予防的に対策を講じることが大切です。また、複数の支援機関を並行して利用することも可能です。自分に合ったサポートを見つけるために、まずは相談してみることから始めましょう。
社会不安障害の人が仕事を探す際の5つのポイント
社会不安障害を抱えながら仕事を探すのは、決して簡単なことではありません。しかし、自分の特性を理解し、適切なアプローチで求職活動を進めることで、長く働き続けられる職場を見つけることは可能です。ここでは、社会不安障害の人が仕事を探す際に押さえておきたい5つの重要なポイントを解説します。
自分の症状と特性を正確に把握する
効果的な就職活動を行うには、まず自分自身の社会不安障害の症状や特性を客観的に把握することが重要です。自己理解があれば、自分に合った職場環境を見極めやすくなります。
- どのような場面で不安や緊張が強まるか具体的にリストアップする
- 症状の程度や頻度を記録し、パターンを把握する
- これまでの職場経験から、自分に合った/合わなかった環境の特徴を分析する
- 自分の強み、スキル、関心分野も同時に整理しておく
社会不安障害と共に働く事務職(20代)
職場環境と業務内容を優先的に考える
社会不安障害の方にとって、給与や福利厚生だけでなく、職場環境や業務内容の適合性がとりわけ重要です。自分の症状と相性の良い環境を優先して検討しましょう。
- オフィスの規模や雰囲気(小規模で静かな環境か、大規模でにぎやかな環境か)
- 業務の予測可能性(定型業務が中心か、臨機応変な対応が多いか)
- 対人コミュニケーションの頻度と性質(直接対面が多いか、メールやチャットが中心か)
- 勤務形態の柔軟性(在宅勤務の可能性、フレックスタイム制の有無)
障害者雇用枠の活用を検討する
精神障害者保健福祉手帳を持っている場合、障害者雇用枠での就職も選択肢の一つです。障害者雇用には様々なメリットがありますが、自分のキャリアプランとの兼ね合いも考慮して検討しましょう。
- 企業側に障害特性への理解と配慮が期待できる
- 業務内容や勤務時間の調整が受けやすい
- 法定雇用率を満たす必要がある企業は積極的に採用を行っている
- 就労支援機関からのサポートを受けながら就職活動ができる
就労支援機関のサポートを受ける
社会不安障害の方が一人で就職活動を行うのは負担が大きい場合があります。就労支援機関を活用すれば、専門家のサポートを受けながら効率的に求職活動を進められます。
- ハローワークの専門援助部門(障害者向け窓口)
- 障害者就業・生活支援センター
- 就労移行支援事業所
- 地域障害者職業センター
就労支援機関を利用して就職した方(30代)
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在宅勤務や時短勤務などの柔軟な働き方を探る
近年はリモートワークの普及により、社会不安障害の方にとって働きやすい選択肢が広がっています。柔軟な勤務形態が可能な企業を積極的に探してみましょう。
- 完全リモートワークまたはハイブリッド勤務(週数日の出社)が可能な企業
- フレックスタイム制を導入している企業(通勤時の混雑を避けられる)
- 時短勤務から始めて徐々に時間を延ばしていける企業
- 障害者雇用で在宅ワーク可能な求人(近年増加傾向)
仕事探しにおいて重要なのは、自分の状態を正しく認識し、無理のない範囲で挑戦していくことです。一度の面接や採用結果で自分の価値を判断せず、長い目で見て自分に合った職場を探していきましょう。
完璧を目指すのではなく、自分の特性と上手に付き合いながら、少しずつステップアップしていく姿勢が大切です。
社会不安障害と共に働く人たちの体験談

社会不安障害を抱えながらも、工夫や周囲のサポートを得て仕事を続けている人は少なくありません。ここでは実際に社会不安障害と共に働いている方々の体験談を紹介します。それぞれの挑戦や成功体験から、自分自身の働き方のヒントを見つけてみてください。
在宅ワークで活躍しているAさんの場合
Aさん(32歳・男性)は、大学卒業後に一般企業に就職しましたが、会議での発言や上司との面談で強い不安を感じるようになり、退職を余儀なくされました。その後、社会不安障害と診断され、治療を続けながら新たな働き方を模索しました。
Aさん(32歳・Webエンジニア)
Aさんのポイント
- 自分のスキルを活かせる在宅ワークという働き方を選択
- 小さな成功体験を積み重ねて自信を構築
- コミュニケーションはチャットやメールを中心にし、ビデオ会議は必要最低限に
障害者雇用枠で事務職に就いたBさんの場合
Bさん(28歳・女性)は、学生時代から人前で話すことや注目を集めることに強い不安を感じていました。就職活動中に社会不安障害と診断され、精神障害者保健福祉手帳を取得。障害者雇用枠で大手企業の事務職に就職しました。
Bさん(28歳・一般事務)
段階的に職場復帰を果たしたCさんの場合
Cさん(41歳・男性)は、10年以上勤めた会社で管理職に昇進した後、強いプレッシャーから社会不安障害を発症し、休職することになりました。半年間の治療とリハビリを経て、同じ会社に段階的に復職しました。
復職段階 | 勤務時間・内容 | 工夫したポイント |
---|---|---|
第1段階 (1ヶ月目) |
週3日、1日4時間勤務 データ分析など個人作業中心 |
通勤ラッシュを避ける時間帯に出社 |
第2段階 (2〜3ヶ月目) |
週5日、1日6時間勤務 小規模ミーティングに参加 |
会議は事前に議題を確認して準備 |
第3段階 (4〜5ヶ月目) |
週5日、通常勤務 一般職として業務復帰 |
定期的に産業医に相談 |
Cさん(41歳・メーカー勤務)
これらの体験談からわかるように、社会不安障害があっても、自分に合った働き方や環境を見つけることで、充実した仕事生活を送ることは可能です。重要なのは自分の特性を受け入れた上で、無理をせず、少しずつできることを増やしていく姿勢です。
また、多くの事例に共通するのは、自分の状態を適切に周囲に伝え、必要なサポートを求める勇気を持つことの大切さです。一人で抱え込まず、支援を求めることで、より良い職場環境を作り出せる可能性が高まります。
社会不安障害(SAD)とは?症状と基本的な特徴
社会不安障害(Social Anxiety Disorder: SAD)は、社交不安障害とも呼ばれ、日常的な社交場面で強い不安や恐怖を感じる精神疾患です。単なる「人見知り」や「内気」とは異なり、社会生活に支障をきたすレベルの症状が特徴です。この章では、社会不安障害の基本的な理解と主な症状について解説します。
社会不安障害の定義と主な症状
社会不安障害は、他者から注目されたり評価されたりする状況に対して、過度の不安や恐怖を感じる障害です。この不安は一時的なものではなく、慢性的に続き、日常生活や職業生活に大きな支障をきたします。
- 認知的症状:「恥ずかしい思いをするのではないか」「否定的に評価されるのではないか」などの強い不安や心配
- 身体的症状:動悸、発汗、震え、赤面、吐き気、めまい、息苦しさなど
- 行動的症状:不安を感じる社交場面を回避する、あるいは強い不安を感じながら耐え忍ぶ
精神科医
社会不安障害の種類(対人恐怖症、赤面恐怖症など)
社会不安障害にはいくつかの種類があり、症状の現れ方や不安を感じる状況によって分類されることがあります。
対人恐怖症
日本で古くから研究されてきた概念で、他者との対面状況で強い不安や緊張を感じる症状です。特に「自分が相手に不快な思いをさせているのではないか」という過剰な心配が特徴的です。
赤面恐怖症
人前で顔が赤くなることに対して強い恐怖を感じる症状です。赤面すること自体よりも、「赤面しているところを他者に見られること」への恐怖が中心になります。
場面特異的な社会不安障害
特定の状況でのみ強い不安や恐怖を感じるタイプです。
- スピーチ恐怖:人前でのスピーチや発表に特化した恐怖
- 会食恐怖:他者と一緒に食事をすることへの恐怖
- 電話恐怖:電話をかけたり受けたりすることへの恐怖
社会不安障害のある会社員(20代)
一般的な社交不安 | 社会不安障害 |
---|---|
特定の場面で一時的に感じる | 日常的な社交場面でも強い不安が続く |
緊張はあるが、通常の活動を続けられる | 不安のために活動を避けたり、大きな苦痛を伴う |
日常生活や仕事に重大な支障はない | 社会的、職業的機能に明らかな障害がある |
社会不安障害と診断された場合でも、それはあなたの人格や能力の否定ではありません。むしろ、自分の特性を理解し、より良い環境で自分の能力を発揮するための第一歩となります。
症状と上手に付き合いながら、自分らしく働ける方法を探していきましょう。
社会不安障害の人が仕事で直面する7つの困難
社会不安障害(SAD)を抱える人にとって、職場はさまざまな挑戦の場となります。他者との交流や評価される場面が日常的に発生するため、症状が顕著に表れやすいのです。ここでは、社会不安障害の人が仕事の場で直面しやすい7つの主な困難について解説します。
電話対応への強い恐怖感
多くの社会不安障害の方が、電話対応に強い恐怖や不安を感じます。相手の表情が見えない中でのコミュニケーションや、即時の応答が求められることが大きなストレス要因となります。
- 突然鳴る電話に出ることへの極度の緊張
- 電話中に声が震えたり、言葉が詰まったりする
- 「周囲に会話を聞かれている」という意識からの不安
会議やプレゼンでの過度な緊張
複数の人が集まる会議や、プレゼンテーションの場は、社会不安障害の方にとって特に困難な状況です。注目を集める場面での強い不安が、業務パフォーマンスを著しく低下させることがあります。
- 会議中に発言を求められることへの極度の恐怖
- 発言順が近づくにつれて高まる不安と心身の緊張
- プレゼン中の「頭が真っ白になる」経験
視線や評価に対する過敏な反応
社会不安障害の方は、他者からの視線や評価に対して非常に敏感です。特に職場では常に誰かに見られているという感覚が強く、日常業務にも影響を及ぼします。
- 上司や同僚の視線を常に意識し、緊張状態が続く
- 「自分の仕事ぶりを批判的に見られている」という過剰な意識
- 些細なミスを極端に恐れ、完璧主義に陥りやすい
通勤時の不安とストレス
仕事に行く前の通勤時間も、社会不安障害の方にとっては大きなハードルとなります。特に混雑した公共交通機関での移動は、強いストレスを引き起こします。
IT企業勤務(40代)
初対面の人とのコミュニケーション困難
新しい人との出会いは、社会不安障害の方にとって特に緊張を伴う場面です。職場での新しい同僚や取引先との初対面は、大きなストレス要因となります。
周囲の理解を得ることの難しさ
社会不安障害は外から見えにくい障害のため、周囲の人から「単なる恥ずかしがり屋」「努力不足」と誤解されることが少なくありません。この理解の欠如が、職場での困難をさらに増幅させます。
- 「もっと積極的になれば」と簡単にアドバイスされる
- 症状を説明しても「みんな緊張するよ」と軽視される
- 「慣れれば大丈夫」という励ましが逆にプレッシャーに
業務変更や異動に対する強い不安
予測可能性と安定が心の安定につながる社会不安障害の方にとって、突然の業務変更や職場異動は大きなストレス要因となります。新しい環境への適応に強い不安を感じることが多いのです。
これらの困難は一人ひとり異なる形で現れ、その程度も様々です。重要なのは、これらの困難が「性格の問題」や「努力不足」ではなく、社会不安障害という疾患に起因する症状だということを理解することです。
適切な環境調整とサポートがあれば、これらの困難は大きく軽減できる可能性があります。
社会不安障害の人に向いていない仕事の特徴
社会不安障害の方が長く安心して働くためには、自分の特性を理解し、症状を悪化させるリスクの高い環境を避けることも大切です。ここでは、社会不安障害の特性と相性が良くない可能性が高い仕事や職場環境の特徴について解説します。もちろん、個人の症状の現れ方や程度は様々ですので、これらは一般的な傾向として参考にしてください。
接客や営業など対人コミュニケーションが主体の仕事
常に人と関わり、積極的なコミュニケーションが求められる職種は、社会不安障害の方にとって継続的なストレス要因となりやすいです。特に以下のような特徴がある仕事は注意が必要かもしれません。
- 接客業:不特定多数の顧客と常に対面する必要がある
- 営業職:新規開拓や交渉など積極的な対人アプローチが求められる
- コールセンター:電話対応が業務の中心となる
- 受付・案内業務:多くの人との短時間の接触が繰り返される
一般事務(20代)
即時の判断や臨機応変な対応が求められる仕事
予測不可能な状況に即座に対応することが求められる仕事は、社会不安障害の方にとって大きなストレス要因となりやすいです。先の展開が読めない不確実性が不安を増幅させる可能性があります。
- 緊急対応職:救急医療、消防、警察など即時判断が必要な職種
- 記者・ジャーナリスト:予定外の取材や急なインタビューが発生する
- 秘書・アシスタント:突然の予定変更や対応が必要になることが多い
頻繁な転勤や環境変化がある仕事
社会不安障害の方にとって、環境の安定性は精神的な安定に大きく寄与します。職場や人間関係が頻繁に変わる仕事は、その都度新たな適応が求められるため、大きな負担となることがあります。
- 総合職(大手企業):数年単位での定期的な部署異動や転勤がある
- 海外勤務が多い職種:言語や文化の違う環境への適応が求められる
- プロジェクト型の仕事:案件ごとにチームが変わり、新たな人間関係構築が必要
チームワークや協調性が特に重視される仕事
常に複数の人と緊密に連携しながら進める業務や、グループでの意思決定が中心となる仕事環境は、社会不安障害の方にとって継続的な緊張をもたらす可能性があります。
- チーム制の業務:常に他メンバーと連携しながら進める必要がある
- ブレインストーミングが多い職場:即興的な発言や意見交換が頻繁に求められる
- 会議主体の組織:頻繁な対面ミーティングで意見表明が必要
自分に合わない仕事や職場環境を避けることは、決して逃げることではなく、自分の特性を活かすための賢明な選択です。自分の強みを発揮できる環境で働くことで、社会不安障害があっても充実したキャリアを築いていくことができるでしょう。
まとめ:社会不安障害があっても自分らしく働ける仕事を見つけるために
社会不安障害があっても、自分に合った仕事や職場環境を選ぶことで、充実したキャリアを築くことは十分可能です。自己理解を深め、自分の特性に合った仕事を見つけることが第一歩です。必要に応じて支援機関を活用し、適切な配慮を求める勇気も大切です。
社会不安障害という特性は、あなたの一部ではあっても、あなたのすべてではありません。
自分の強みや興味を大切にしながら、あなたらしい働き方を見つけていきましょう。一人で悩まず、信頼できる人や専門家に相談することも忘れないでください。