公開日:2025.07.18
PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは?症状・原因・治療法を専門医が解説
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- このコラムのまとめ
- PTSD(心的外傷後ストレス障害)について、基本知識から症状、原因、診断、効果的な治療法まで専門医が解説。トラウマ体験後の心の回復プロセスや日常生活でのセルフケア方法、職場・学校での対応、利用できる支援リソースも紹介。当事者の体験談を交えながら、PTSDからの回復への希望を伝える総合ガイド。
もくじ
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PTSD(心的外傷後ストレス障害)の基本知識
PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、強い恐怖やトラウマになる体験をした後に起こる精神的な障害です。「Post Traumatic Stress Disorder」の頭文字をとってPTSDと呼ばれており、日本では阪神淡路大震災をきっかけに広く認知されるようになりました。
PTSDの定義と特徴
PTSDは、生死に関わるような危険な出来事や強い恐怖を伴う体験によって引き起こされる精神疾患です。特徴として、トラウマ体験を連想させる事柄に恐怖を感じたり、記憶が断片化していることが挙げられます。
精神科医
出典:
PTSDの発症率
トラウマの種類によって発症率は異なります。自然災害より、他人に打ち明けづらい戦闘・性暴力などの体験の方が発症率は高いとされています。世界的には、発症から数ヶ月で自然回復する人が6~7割程度と言われています。
PTSDの効果的な治療法
PTSD(心的外傷後ストレス障害)には、患者の状態や進行度に合わせた効果的な治療法があります。症状が1ヶ月以上続く場合は専門的な治療が必要です。
心理療法によるアプローチ
PTSD治療の中核となる心理療法には以下のようなものがあります。
- 持続エクスポージャー療法:安全な環境でトラウマと向き合う治療法
- EMDR:眼球運動による脱感作と再処理法
- 認知行動療法:トラウマに関連した思考パターンの修正
薬物療法
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を中心とした薬物療法も症状緩和に効果があります。症状の特性に応じて適切な薬剤が処方されます。
精神科医
PTSDからの回復事例と希望
PTSD(心的外傷後ストレス障害)からの回復は決して容易ではありませんが、適切な治療と支援によって多くの人が充実した生活を取り戻しています。
回復プロセスの実例
震災PTSD回復者
長期的な予後と成長
PTSDからの回復において「完治」とは、症状とうまく付き合いながら充実した生活を送れるようになることです。多くの回復者が、トラウマ体験を通じた「ポストトラウマティック・グロース(心的外傷後成長)」を経験します。
- 人間関係の深化
- 新たな人生の可能性の発見
- 内面的な強さの獲得
- 人生への感謝の気持ち
PTSDとの共存:日常生活でのセルフケア

PTSD(心的外傷後ストレス障害)を抱えながらも充実した日常生活を送るためには、適切なセルフケアが欠かせません。
症状緩和のためのストレス管理法
日常的なストレス管理は症状コントロールの基本です。呼吸法やグラウンディング技法を取り入れましょう。
臨床心理士
健康的な生活習慣
- 規則正しい睡眠習慣の維持
- バランスの良い食事
- 適度な運動(特にヨガなどのマインドフル運動)
- アルコールやカフェインの過剰摂取を避ける
安全な場所の確保
症状が強まった時に落ち着ける「安全な場所」や「安全なもの」を用意しておくことで、不安や過覚醒症状が軽減できます。
PTSD当事者・家族向けの支援リソース
PTSD(心的外傷後ストレス障害)と向き合うには、適切な支援を受けることが重要です。当事者とその家族が利用できる支援リソースを紹介します。
専門医療機関の選び方
PTSDの治療には専門知識を持った医療者による適切な診断と治療が不可欠です。トラウマ治療に詳しい医療機関の特徴と探し方を知っておきましょう。
- 「トラウマ治療」を専門分野として明記している
- エビデンスに基づいた治療法を提供している
- 患者の安全感と選択肢を重視する姿勢がある
相談窓口と支援団体
サポートグループ参加者
精神保健福祉センター、保健所、トラウマ専門の支援団体、ピアサポートグループなど、様々な相談窓口があります。
職場や学校でのPTSD対応
PTSDを抱える人にとって、職場や学校は生活の大きな部分を占める重要な環境です。
適切な理解と配慮があれば、PTSDがあっても充実した職業生活や学業を送ることが可能になります。
PTSDと仕事・学業の両立
PTSDの症状が仕事や学業に与える影響を理解し、対処法を知ることが大切です。
職場復帰したPTSD当事者
雇用主や教育機関が行うべき配慮
- 勤務時間の柔軟な調整
- トリガーとなる業務の見直し
- 休憩できる場所の確保
- 必要に応じた学習環境の調整
PTSDの主な症状と種類
PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状は個人差がありますが、一定のパターンがあります。主な症状と種類について解説します。
代表的な4つの症状カテゴリー
- 再体験症状:フラッシュバック、悪夢、侵入的な記憶
- 回避症状:トラウマを想起させる状況や会話を避ける
- 認知・感情の否定的変化:自責の念、世界は危険という考え
- 過覚醒症状:過度の警戒心、睡眠障害、集中困難
PTSD当事者
単純性PTSDと複雑性PTSD
一度きりのトラウマによる「単純性PTSD」と、長期間の反復的トラウマによる「複雑性PTSD」があります。後者はより症状が複雑で治療も長期化します。
PTSDの原因となる心的外傷体験
PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、強い恐怖や無力感を伴うトラウマ体験によって引き起こされます。PTSDの原因となる様々なトラウマ体験とその発症メカニズムについて解説します。
トラウマとなりやすい出来事の種類
- 自然災害・事故:地震、津波、火災、交通事故など
- 対人的トラウマ:暴力、性暴力、虐待、いじめなど
- 戦争・紛争:戦闘体験、テロ被害、難民体験など
- 医療関連:重篤な疾患、侵襲的医療処置など
自然災害サバイバー
発症のメカニズム
トラウマ体験時の強いストレスにより、脳の機能や構造に変化が生じ、恐怖反応の調節が困難になります。
PTSDの診断と検査方法
PTSD(心的外傷後ストレス障害)の適切な治療を受けるためには、正確な診断が不可欠です。診断プロセスと検査方法について解説します。
専門医による診断プロセス
PTSDの診断は、精神科医や臨床心理士などの専門家によって行われます。問診、心理検査、身体的健康状態の評価などが含まれます。
精神科医
国際的な診断基準
診断には主にDSM-5とICD-11という国際的な診断基準が用いられます。トラウマへの曝露、再体験、回避、認知・感情の陰性変化、過覚醒などの症状が1ヶ月以上続くことが診断の条件です。
よくある質問(FAQ)
PTSD(心的外傷後ストレス障害)に関する一般的な疑問にお答えします。
PTSDの治療期間はどのくらいですか?
個人差が大きく、症状の重症度やトラウマの種類によって異なります。単純性PTSDなら数ヶ月、複雑なケースでは1年以上かかることもあります。
PTSDは完全に治りますか?
トラウマ治療専門家
子どものPTSDは大人と症状が違いますか?
はい、子どもは発達段階によって症状の表れ方が異なります。トラウマ的遊び、退行現象、身体症状などが特徴的です。