公開日:2025.09.17
ADHDの特性を活かせる仕事とは?向いている職種と就労のポイント
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- このコラムのまとめ
- ADHDの特性を理解し、その強みを活かせる仕事選びのポイントを解説。創造性や集中力を活かせるクリエイティブ職や専門職、働き方の工夫、職場での対策など、ADHDの方が充実したキャリアを築くための具体的なアドバイスを紹介しています。自分に合った仕事と環境を見つけることで、ADHDの特性を強みに変えましょう。
ADHDの方に向いている仕事・職種
ADHDの特性を持つ方が自分に合った仕事を見つけることは、長期的なキャリア形成において非常に重要です。適切な職種に就くことで、特性を強みに変え、苦手な部分による影響を最小限に抑えることができます。
クリエイティブな発想力を活かせる仕事
ADHDの方は独創的な発想力や豊かな感受性を持つことが多く、クリエイティブな分野で強みを発揮できる場合があります。
- Webデザイナー・グラフィックデザイナー
- 広告クリエイター・企画担当
- イラストレーター・アニメーター
キャリアカウンセラー
興味のある分野に没頭できる専門職
ADHDの特性の一つに「過集中」があります。興味を持った分野には驚くほどの集中力を発揮できるため、専門性の高い職種が向いていることがあります。
- プログラマー・システムエンジニア
- 研究者・専門コンサルタント
- ライター・ジャーナリスト
フットワークの軽さを活かせるアクティブな仕事
多動性や行動力が高いADHDの方には、身体を動かしたり場所を移動したりする機会が多い仕事が適していることがあります。
- 営業職(特に外回り営業)
- フィールドエンジニア
- カメラマン・映像クリエイター
ADHDの特性 | 活かせる職種 |
---|---|
創造性・発想力 | デザイナー、企画職 |
過集中力 | 研究職、プログラマー |
行動力・即断力 | 営業職、起業家 |
重要なのは、ご自身のADHDの特性をよく理解し、どのような強みと弱みがあるかを把握したうえで仕事を選ぶことです。全てのADHDの方に同じ仕事が向いているわけではなく、個人の特性や興味関心に合わせた職種選びが大切です。自分の強みを活かせる環境で働くことで、充実したキャリアを築くことができるでしょう。
ADHDの方が持つ強みと長所
ADHDは医学的には「障害」と位置づけられていますが、実はさまざまな強みや長所を併せ持っています。これらの特性を理解し活かすことで、職場や日常生活でも大きな力を発揮することができます。
創造性と豊かな発想力
ADHDの方は、一般的には思いつかないような独創的なアイデアを生み出す能力に優れていることが多いです。既存の枠にとらわれない思考ができることは、クリエイティブな分野で大きな強みとなります。
興味のある分野への集中力と没頭力
ADHDの方の特徴的な能力の一つに「ハイパーフォーカス」(過集中)があります。興味を持った対象に対しては、驚くほどの集中力を発揮し、時間を忘れて没頭することができます。この特性は、研究開発や専門的な技術習得など、高度な集中力が求められる仕事で活かすことができます。
クリエイティブディレクター
直感的な判断力と行動力
ADHDの方は、物事を直感的に判断し、すぐに行動に移せる「即断即決」の特性を持っていることがあります。この特性は特に緊急時や迅速な対応が求められる場面で強みとなります。起業家や営業職など、決断力と行動力が求められる仕事で活かせる場合が多いでしょう。
感受性の豊かさ
ADHDの方は感情や外部刺激に対する感受性が豊かで、周囲の雰囲気や感情の機微を敏感に察知できることがあります。この特性は、人との関わりを大切にする職種で強みになることがあります。
ADHDの方に合った働き方のスタイル
ADHDの特性を持つ方が職場で能力を最大限に発揮するためには、働き方のスタイルや環境も重要な要素となります。従来の画一的な働き方ではなく、柔軟な勤務形態を選ぶことで、パフォーマンスを向上させることができます。
フレックスタイム制・裁量労働制
ADHDの方は、時間帯によって集中力や作業効率に波があることが多いため、自分のリズムに合わせて働ける時間的柔軟性のある勤務形態が適しています。フレックスタイム制では、コアタイムと自由時間を組み合わせることで、一定の自由度を保ちながらも組織との協調性を維持できます。
人事コンサルタント
リモートワーク・在宅勤務
オフィス環境での様々な刺激(騒音、人の動き、雑談など)に敏感なADHDの方にとって、リモートワークや在宅勤務は集中力を維持しやすい働き方となります。自分でコントロールできる環境で作業ができるため、パフォーマンスが向上することが多いでしょう。
プロジェクト型・タスク完結型の業務
ADHDの方は単調な業務よりも、明確なゴールがあり、一定期間で完結するプロジェクト型の業務が向いていることが多いです。短期間で成果が出るため達成感を得やすく、モチベーションも維持しやすくなります。
ADHDとは?主な特性と症状
ADHD(Attention-Deficit Hyperactivity Disorder:注意欠如・多動症)は、発達障害の一種で、注意力の欠如、衝動性、多動性などを主な特徴とする神経発達症です。近年では、子どもだけでなく、成人のADHDも社会的に認知されるようになってきました。
不注意優勢型の特徴
不注意優勢型ADHDは、注意力の持続や集中力の維持が難しいタイプです。外見からは分かりにくいため、「怠けている」と誤解されやすい特徴があります。
- 細部への注意が散漫で、ケアレスミスが多い
- 課題や活動に注意を集中し続けることが難しい
- 物をよく失くす(鍵、財布、スマホなど)
- 外部からの刺激で容易に注意がそれる
多動・衝動優勢型の特徴
多動・衝動優勢型ADHDは、じっとしていることが難しく、衝動的に行動してしまう特性があります。
- 着席中もじっとしていられない
- 過度にしゃべる、順番を待つことが難しい
- 結果を考えずに行動してしまう
臨床心理士
混合型の特徴
混合型ADHDは、不注意と多動・衝動性の両方の特性が見られるタイプです。個人によって症状の現れ方や程度は様々で、適切な環境とサポートがあれば、特性を強みに変えることも可能です。
ADHDの方が仕事で困りやすいポイントと対策
ADHDの特性は、仕事の場面でさまざまな困難をもたらすことがあります。しかし、自分の特性を理解し適切な対策を講じることで、多くの問題は軽減できます。ここでは、代表的な困りごとと効果的な対処法を紹介します。
マルチタスクの苦手意識への対処法
ADHDの方は、複数の作業を同時進行させる「マルチタスク」が苦手な傾向があります。
- シングルタスク化:作業を細分化し、一つずつ完了させる
- ポモドーロ・テクニック:25分集中→5分休憩のサイクルで作業する
- タスクリストの活用:すべての作業を書き出し、優先順位をつける
時間管理・スケジュール管理の工夫
ADHDの方は「時間の感覚」が独特で、時間の経過を実感しにくい傾向があります。
- アラーム・タイマーの活用:作業開始時間、終了時間をアラームでお知らせ
- バッファタイムの設定:予定の15〜30分前に到着するよう計画を立てる
- 締め切りの細分化:大きなプロジェクトを小さな締め切りに分ける
職業カウンセラー
ミスを減らすための具体的な対策
不注意によるミスは、ADHDの方が職場で最も頻繁に直面する問題の一つです。
- チェックリストの作成:確認すべき項目を漏れなくリスト化
- 指示の視覚化:口頭指示はメモを取る、可能なら文書でもらう
- 「待つ」習慣:完成したと思ったら一度離れ、時間を置いてから確認する
ADHDの方が避けた方が良い仕事の特徴
ADHDの特性を持つ方が職業選択をする際には、自分の強みを活かせる仕事を選ぶことと同様に、特性上苦手とする業務内容の仕事を避けることも重要です。もちろん、個人差があり一概には言えませんが、一般的にADHDの特性と相性が悪いとされる仕事の特徴について解説します。
細かいミスが許されない業務
ADHDの方は不注意による細かなミスが生じやすいという特性があります。そのため、わずかなミスが重大な結果につながる職種は、大きな負担となる可能性があります。
- 医療関係(投薬や処置の誤りが命に関わる)
- 会計・経理(数字の入力ミスが決算に影響する)
- 品質検査(製品の欠陥を見つける仕事)
就労支援専門家
単調な作業が続く仕事
ADHDの方は、刺激の少ない単調な作業を長時間続けることが苦手な傾向があります。同じことの繰り返しが中心となる仕事は、集中力の維持が難しく、ストレスを感じやすい環境となります。
- 製造ラインでの単純作業
- データ入力などの定型業務
- 長時間の監視業務(警備など)
同時進行のタスクが多い職場環境
ADHDの方は、マルチタスクが苦手という特性があります。一度に多くの業務を抱える職場環境や、常に割り込み業務が発生するような仕事は、混乱やストレスの原因となりやすいでしょう。
ADHDの方の就職・転職に役立つ支援制度とサービス
ADHDの特性を持つ方が就職・転職活動を行う際には、様々な公的支援制度やサービスを活用することで、より自分に合った職場を見つけやすくなります。ここでは、代表的な支援制度とサービスを紹介します。
障害者雇用制度の活用方法
ADHDなどの発達障害も精神障害に含まれ、精神障害者保健福祉手帳を取得することで、障害者雇用制度を利用できます。
- 企業には法定雇用率があり、積極的に採用している
- 職場での合理的配慮が受けやすくなる
- ADHDの特性に配慮した業務調整が期待できる
障害者雇用コンサルタント
就労移行支援事業所の利用
就労移行支援事業所は、障害のある方が一般企業に就職するための訓練や支援を提供する福祉サービスです。
- 就労に必要なビジネスマナーやコミュニケーションスキルの訓練
- ADHDの特性に合わせた作業訓練や集中力向上プログラム
- 職場実習の機会提供と就職活動のサポート
- 就職後の職場定着支援(通常は6ヶ月間)
専門的な就労支援サービス
その他にも、以下のような専門的な支援サービスがあります。
- ハローワークの専門窓口:障害者向け求人の紹介や職業相談
- 地域障害者職業センター:職業評価やジョブコーチ支援
- 障害者就業・生活支援センター:就業面と生活面の一体的支援
- 障害者向け転職エージェント:専門的なキャリアサポート
企業がADHDの方に対して行うべき配慮と工夫
ADHDの特性を持つ従業員が能力を最大限に発揮するためには、企業側の適切な理解と配慮が欠かせません。合理的配慮を行うことは、ADHDの従業員への支援だけでなく、組織全体の生産性向上にもつながります。
業務指示の明確化と視覚化
ADHDの方は、口頭のみの指示だと情報を見落としたり忘れたりすることがあります。明確で具体的な指示を視覚的な形で提供しましょう。
- 口頭指示と同時に文書(メールやメモ)でも指示を出す
- 複雑な業務手順はフローチャートや図解で説明する
- 重要なポイントや締め切りは色分けや太字で強調する
人事マネージャー
作業環境の整備と集中できる空間の確保
ADHDの方は外部刺激に敏感なため、集中しやすい空間を提供することが重要です。
- パーティションで区切られた作業スペースや個室の提供
- 騒音の少ない場所へのデスク配置の変更
- 必要に応じてリモートワークを可能にする体制づくり
業務の細分化と適切なタスク管理
ADHDの方はマルチタスクが苦手な傾向があるため、業務を細分化し、一度に一つのタスクに集中できるようにしましょう。
- 大きなプロジェクトを小さな作業単位に分割する
- 明確な中間目標と期限を設定する
- 一度に複数の作業を依頼しない
まとめ:ADHDの特性を理解して自分に合った仕事を見つけるために
ADHDの特性は、適切な環境では強みとなります。自分の特性を理解し、それを活かせる仕事を選ぶことが成功への鍵です。
ADHDを持つマーケティング担当者
支援制度やツールを積極的に活用し、必要に応じて職場での配慮を求めることも大切です。何より重要なのは、ADHDを「障害」ではなく「異なる能力」と捉え、自分らしい働き方を見つけることです。あなたの特性は、適切な環境で活かされたとき、大きな強みとなります。