公開日:2025.09.29

発達障害とHSPを併せ持つ場合の特徴と仕事での活かし方

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発達障害とHSPを併せ持つ場合の特徴と仕事での活かし方
このコラムのまとめ
発達障害とHSPを併せ持つ方の特徴と仕事での活かし方を解説。両方の特性がもたらす注意力のパラドックスや感覚過敏などの特徴、細部への気づきと即行動力などの職場でのメリット、適した職種や環境、抱えやすい困難と対処法まで、特性を強みに変える視点を提案します。

発達障害とHSPを両方持つ場合の独特な特徴

発達障害とHSPを両方持つ場合、それぞれの特性が互いに影響し合い、独特の体験や行動パターンを生み出します。これらが組み合わさることで生まれる特徴を見ていきましょう。

「散漫」なのに「鋭い」。矛盾が生むユニークな才能

ADHDの「気が散りやすい(次々と興味が移る)」という性質と、HSPの「微細な情報をキャッチする」という性質。一見すると正反対のようですが、この2つが掛け合わさると、不思議な化学反応が起きます。
普段は注意散漫に見えても、いざスイッチが入ると、ADHDの行動力で全体を見渡しつつ、HSPの繊細なセンサーで違和感を拾い上げる……。そんな、他の人には真似できない「全方位レーダー」のような働きをすることがあるのです。

多くの当事者さんが「自分は集中力がない」と落ち込んで相談に来られます。でもお話を伺うと、興味のある分野では驚くほどの探偵のような洞察力を発揮されていたりするんです。「集中できない」のではなく、「集中のスイッチが極端(0か100か)」なだけ。この激しい波を「自分の特性」として乗りこなす感覚を持つと、ぐっと生きやすくなりますよ。

臨床心理士

感覚過敏と情報処理の特性

両方の特性を持つ場合、HSPの「周囲からの情報量が多い」特徴とADHDの「注意の切り替えの早さ」が組み合わさり、より多くの事に気づきやすくなります。このため、一つのことに集中し続けることがさらに難しくなることがあります。

社会的コミュニケーションへの影響

ADHDの方は「発言に注意を向け続ける」ことが苦手ですが、HSPの高い共感性が加わることで、「相手が傷つく言葉」をキャッチしやすくなり、失言が減るという利点があります。

以前は「相手を不快にさせてしまうのでは」と常に不安でした。でもHSPの感受性のおかげで、人のちょっとした表情や声色の変化に気づけることが増え、むしろ人間関係で役立つことも多いです。自分の“感じすぎる性質”が武器になると気づいた瞬間、少し楽になりました。

当事者の声(30代・女性)

発達障害とHSPの基本的な違いを理解する

発達障害とHSPは、「音がうるさく感じる」「人混みが苦手」といった困りごとが似ているため、よく混同されます。しかし、この2つは社会的な立ち位置(公的なサポートの有無)や、原因の捉え方が大きく異なります。

発達障害(ADHD・ASD):脳の「OS」の違い

発達障害は、生まれつき脳の働き方に偏りがある状態を指します。例えるなら、多数派の人とは脳の「OS(オペレーティングシステム)」が少し異なっている状態です。
最大の特徴は、「医学的な診断名」がつくことです。医師の診断を受けることで、障害者手帳の取得や、障害年金の受給、就労移行支援の利用といった、公的なセーフティネット(福祉サービス)を使えるようになります。

出典:

HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン):深すぎる「感受性」

一方、HSPは病名ではありません。「非常に繊細な気質を持つ人」という、心理学的な概念(性格のタイプ)です。
脳の病気や障害ではなく、「情報を深く処理しすぎてしまう特性」と言い換えると分かりやすいかもしれません。医学的な診断基準はないため、病院で「あなたはHSPです」と診断書をもらうことはできませんが、その「感じやすさ」は生まれ持った大切な個性の一つです。主に以下のような特徴があります。

  • 感受性が強い
  • 深く物事を考える
  • 他者の感情に共感しやすい

また、ADHDやASDなどと同じように語られることもありますが、HSPは医学的な障害ではなく、世界の人口の約15~20%が持つとされる気質です。

仕事における発達障害×HSPのメリット

ADHDの「行動力」とHSPの「慎重さ」。一見すると矛盾するこの2つの特性が、仕事の現場でカチッとかみ合った時、他の人には真似できないパフォーマンスを発揮します。

「違和感」に気づき、即座に動くレスキュー能力

ただ行動が早いだけではありません。HSP特有のセンサーが「あ、このままだとトラブルになるかも」「あのお客様、何か困っているな」という微細な予兆をキャッチし、そこにADHDの瞬発力で先回りして対処します。この「危機察知」と「即応」のセットは、変化の激しい現場や、人のケアにおいて最強の武器になります。

「好き」を突き詰める探究心

HSPは物事を深く処理する傾向があり、ADHDは興味のある対象に過集中する傾向があります。この2つが重なると、興味を持った分野に対して、広範囲の情報を集めながら、かつ深堀りするという、驚異的なリサーチ能力や専門性を発揮することがあります。

発達障害×HSPの特性を活かせる職種と働き方

発達障害とHSPの両方の特性を持つ方が輝くためには、「刺激」と「静寂」のバランスが鍵になります。ADHD的な退屈嫌いと、HSP的な刺激過多への弱さ。この両方を満たせる働き方を探しましょう。

適性が高い3つのフィールド

この特性の組み合わせに適した職種には主に以下のような職種があります。

  • クリエイティブ(デザイナー、ライター):
    ADHDの「斬新な発想」を、HSPの「繊細な感性」で形にする仕事。自分のペースで没頭できる時間が確保しやすいのも利点です。
  • IT・技術職(エンジニア、分析):
    細部へのこだわり(HSP)と、新しい技術への好奇心(ADHD)が活かせます。エラーを見逃さない緻密さが重宝されます。
  • 相談・支援職(カウンセラー):
    相手の言葉にならない感情を読み取る力(HSP)と、解決に向けて具体的に動く力(ADHD)の両方が求められる現場です。

これらの職種では、細部への注意力と創造的思考、高い共感性といった特性が強みとなります。

「自分を守る」ための環境条件

能力を発揮するための絶対条件は、「五感への刺激」をコントロールできることです。

  • 人の視線や話し声が気にならない「パーテーション」や「個室」がある
  • 「急な割り込み」が少なく、チャットやメールでタスクが可視化されている
  • 疲れたら一人になれる休憩スペースがある、または在宅勤務が選べる

会社員としてこれらの条件を満たすのが難しい場合は、環境を自分でフルカスタマイズできるフリーランスや自営業という選択肢も、決して夢物語ではありません。

特性を持つ方が安心して働けるかどうかは、職種だけでなく「職場文化」や「上司の理解」に大きく左右されます。例えば同じデザイナー職でも、締め切りや打ち合わせのスタイルによって負担が全く違うこともあります。自分の強みが発揮できる環境を探す姿勢が大切です。

キャリアカウンセラー

発達障害×HSPが抱えやすい職場での困難

発達障害とHSPの両方の特性を持つ方は、職場環境において特有の困難に直面することがあります。

興味の移り変わりによる集中力の分散

HSPの敏感さにより周囲の刺激に過敏に反応し、ADHDの特性によって注意が容易に逸れやすくなります。この特性により、長期的なプロジェクトの完遂や複数のタスク管理が困難になることがあります。

感覚過負荷によるバーンアウトのリスク

環境からの刺激に対して特に敏感なため、オフィスの騒音や蛍光灯のちらつきなどにより、急速にエネルギーを消耗してしまいます。この感覚過負荷は、慢性的なストレスやバーンアウトにつながる可能性があります。

オフィスの蛍光灯やキーボードの音だけで頭が疲れてしまい、なぜ自分だけが消耗するのかずっと理解できませんでした。HSPと発達障害の両方の特性があると知ってから「環境の調整は自分のわがままではない」と思えるようになり、ノイズキャンセリングイヤホンを使うなど対策できるようになりました。

当事者の声(20代・男性)

出典:

仕事で成功するための実践的対処法

発達障害とHSPの両方の特性を持つ方が職場で成功するためには、適切な対処戦略を実践することが重要です。

自己理解と特性の受容

自分の強みと弱みを客観的に分析し、理想的な作業環境や感覚過敏の引き金となる要素を把握しましょう。自分の特性を「欠陥」ではなく「異なる処理様式」として捉え直すことが大切です。

環境調整と合理的配慮

静かな作業スペースの確保、ノイズキャンセリングヘッドフォンの使用、視覚的な整理ツールの活用など、職場環境を自分の特性に合わせて調整しましょう。必要に応じて在宅勤務やフレックスタイム制度の利用も検討してください。

「特別扱いをしてほしい」と言うのは勇気がいりますよね。でも、環境調整は決して「甘え」や「わがまま」ではありません。視力が弱い人が眼鏡をかけるのと同じで、仕事をするためのスタートラインに立つために必要な「装備(合理的配慮)」にすぎないのです。 合わない環境で無理に頑張り続ける必要はありません。私たちと一緒に、あなたにとって一番ピントが合う環境(働き方)を探していきましょう。

発達障害支援員

一人で抱え込まず、「プロの視点」を借りる

「生きづらいけれど、病院に行くほどなのかな……」と迷う方は多いです。しかし、発達障害とHSPが複雑に絡み合っている場合、自分一人で原因を紐解くのは至難の業です。専門家の力を借りることは、決して甘えではありません。

発達障害の診断は「権利」を得るための鍵

精神科での診断を「自分に障害者のレッテルを貼ること」と怖がる必要はありません。診断とは、あなたの性格を否定するものではなく、「公的な支援サービスを使うためのチケット(権利)」を手に入れる手続きにすぎないからです。
診断がつくことで、障害者手帳の取得や、専門的な就労支援を受ける道が開けます。あくまで「生きやすくするための手段」として割り切って活用しましょう。

出典:

HSPは「相性の良い」カウンセラー探しから

HSPは気質であるため、病院で薬をもらって治すものではありません。そのため、医師よりもカウンセラーや臨床心理士の方が、深く話を聞いてくれるケースが多いです。
探す際は、HPなどで「HSPへの理解」を明記しているか確認するのはもちろん、初回面談で「HSPについてどう思われますか?」と直球で聞いてみるのも一つの手です。否定せずに共感してくれる、波長の合うパートナーを見つけることが、心の安定への近道です。

専門家との相談は継続的なプロセスであり、信頼関係を築きながら自分に合った対処法を見つけていくことが大切です。

まとめ:「治すべき欠点」ではなく、「使いこなすべき才能」

発達障害とHSPの両方の特性を持つことは、独自の困難をもたらすこともありますが、同時に貴重な強みも秘めています。

「治すべき欠点」ではなく、「使いこなすべき才能」

発達障害とHSPを併せ持つことは、例えるなら「感度の高すぎるアンテナ」と「パワフルなエンジン」を同時に搭載しているようなものです。当然、普通の人よりも疲れやすいですし、生きづらさを感じる場面も多いはずです。

でも、どうかそれを「欠陥品だ」なんて思わないでください。
そのアンテナは、他の人が見落とす小さな変化に気づく「繊細な優しさ」であり、そのエンジンは、誰も思いつかない行動力の源泉でもあります。

無理に「普通」の枠に収まろうとする必要はありません。自分自身の取扱説明書を少しずつ書き足しながら、あなたにしか歩けない凸凹(デコボコ)だけど彩り豊かな道を、マイペースに進んでいきましょう。

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