公開日:2025.11.10
双極性障害でも働ける?向いている仕事・職場環境・働き方を徹底解説
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- このコラムのまとめ
- 双極性障害の人は、働き方に関して何らかの悩みを抱えているケースが多くあります。しかし、気分の波が激しい双極性障害をもっていても、快適かつ長期的に働くことは十分可能です。とはいえ、「双極性障害で仕事が長続きしない」「自分に向いている仕事が何かわからない」「就職したいけれど相談先がわからない」などの不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、双極性障害の人の特徴や困りごとを紐解くとともに、長く仕事を続けるための働き方の工夫や向いている仕事、就職に役立つ就労支援サービスなどを解説します。双極性障害が原因で仕事に悩んでいる人は、ぜひ参考にしてみてください。
もくじ
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双極性障害とは?Ⅰ型とⅡ型の違いを解説
双極性障害とは躁うつ病とも呼ばれ、躁状態とうつ状態が繰り返される精神疾患を指します。常にどちらかの症状が出続けているわけではなく「普通の状態」のときもあることが特徴です。
双極性障害には、大きく分けて双極Ⅰ型障害・双極Ⅱ型障害の2タイプがあり、Ⅰ型は生活に支障をきたす激しい躁状態が現れます。突飛な行動が見られ、眠れずに動き回る、話が止まらないなどの症状が典型的です。
一方Ⅱ型は、ふだんの生活においてそれほど支障はない程度の躁状態を指します。本人が総状態だと気づくケースは少なく、家族や友人が気づく場合が多く見られます。Ⅰ・Ⅱ型ともに躁状態・うつ状態が現れ、繰り返すのが特徴です。
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双極性障害の人が仕事のときに感じる困りごとは?
双極性障害の人が仕事のときに感じる困りごととしては、気分の波の激しさやコミュニケーションの難しさなど多岐にわたります。以下で、よくあるケースを解説しているので参考にしてみてください。
気分の波が激しく仕事の効率に影響したりミスをしたりする
気分の浮き沈みが激しいことで仕事の効率や集中力に影響が出るのは、双極性障害の代表的な困りごとです。躁状態のときは積極性に溢れているので意欲的に取り組める一方で、注意が散漫になったり、ミスを繰り返したりする傾向が見られます。反対に、うつ状態のときは思考や動作が遅くなり、ふだんは難なくこなしていた作業にも時間がかかるのも典型的なパターンです。
気分の変動が大きいと仕事のペースが安定せず、周囲から波がある・集中していないと誤解されることも少なくありません。本人にはやる気があっても、心身の状態が追いつかずに焦りや自己嫌悪を感じるケースも多く見られます。
人間関係のトラブルやコミュニケーションに障害を感じる
双極性障害の人は、気分の状態によってコミュニケーションの取り方が変わりやすく、人間関係でトラブルが起こることがあります。例えば躁状態では気分が高揚した結果、話しすぎたり、相手の意見を遮ってしまったりして、周囲に強引な印象を与えてしまう場合も。うつ状態のときは自分に自信が持てず、人と関わること自体が負担に感じられるケースが多く見られます。
気分の波による言動の変化があると、周囲から態度が急に変わる・機嫌が悪いと受け取られてしまうことも珍しくありません。誤解やすれ違いが積み重なることで職場で孤立を感じる、コミュニケーションへの不安が強まるといったケースもあります。
無気力なときは仕事を休みがちになる
強い無気力感や疲労感により、仕事に行くこと自体が難しくなるのもよくある困りごとです。例えば朝起きても体が重く感じられたり、準備をする気力が湧かなかったりして、欠勤や遅刻が増えてしまうことも珍しくありません。また出社できたとしても頭の中が働かず、判断力や集中力が低下して、簡単な作業でも多大な負担に感じる場合もあります。
無気力は決して怠けではなく、うつ状態の症状のひとつです。しかし、周囲の理解が得られにくいことも多く、やる気がないと誤解され、本人が罪悪感や焦りを感じてしまうこともあります。
双極性障害の人が仕事を続けていくための働き方とは?
双極性障害の人が無理なく仕事を続けていくためには、働き方を工夫することが大切です。以下で、実際の仕事で活用できる工夫の例を解説していきます。
通院や服薬をしっかりと続けながら働くのが大切
双極性障害の治療では、気分の波を安定させるために通院と服薬の継続が欠かせません。症状が落ち着いている時期でも、自己判断で通院をやめたり薬を減らしたりすると、再び気分の変動が強まるおそれがあります。
また主治医との対話を続けるのも、仕事を続けるうえで重要なポイント。例えば仕事と障害の両立に関する相談が定期的にできれば、体調の変化に応じた働き方の見直しも行いやすくなりますよ。
また職場に体調のことを伝える場合も、通院していると有利です。医師の診断書や意見書をもとに説明すれば、上司や同僚の理解を得やすいでしょう。安定した治療の継続こそが、長く働き続けるための土台になります。
職場からの合理的配慮を受けるのを検討してみるのもおすすめ
職場で安定して働き続けるためには、合理的配慮を受けることを検討するのも重要です。合理的配慮とは、障害のある人がほかの人と同じように働けるよう、企業が業務内容や勤務環境を調整する取り組みのこと。2024年4月に障害者差別解消法の改正が行われ、民間企業にも合理的配慮の提供が義務化される運びとなりました。
例えば双極性障害の場合、気分の波に合わせて勤務時間を柔軟にしたり、業務量を調整してもらったりといった支援が考えられます。また、通院や服薬の時間を確保できるようにする、静かな作業スペースを用意してもらうなども、集中しやすい環境づくりにつながるでしょう。
なお合理的配慮は、障害者雇用枠だけでなく一般雇用でも相談が可能です。医師の意見書や診断書をもとに、人事担当者や産業医に事情を伝えることで、無理のない働き方を実現しやすくなりますよ。
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双極性障害に向いている職場環境の特徴
双極性障害に向いている職場環境の特徴は、障害への配慮・理解がある、柔軟に働けるなどが当てはまります。以下で特徴別に解説しているので参考にしてください。
双極性障害に配慮があり、困ったときに相談できる窓口が設けられている
メンタルヘルスへの理解があり、困ったときに相談できる窓口が整っている環境は、双極性障害の人にとって安心して働けるといえます。例えば上司・人事担当者・産業医・社内カウンセラーなど、体調や働き方について話せる相手が明確に決まっていれば、症状が悪化した場合でも早めに対応しやすくなりますよ。
また、会社全体としてメンタルの不調は特別なことではないという雰囲気があると、必要なときに相談しやすく、孤立を防ぐことができるのもメリット。さらに休職や勤務調整などの判断もスムーズに行えるため、結果的に長く安定して働き続けることにつながるでしょう。
業務量・勤務時間の変化がそれほどない
業務量や勤務時間の変化が少ないのも、双極性障害の人におすすめできる環境です。気分の波が大きいと、突発的な残業や急なスケジュール変更が強いストレスとなり、体調の悪化につながりがち。一方、毎日おおむね同じパターンで働ける環境なら、生活リズムが整いやすく、症状の安定にも役立つでしょう。
また担当する業務の内容が一定していて、頻繁に変わらないのも安心材料になります。仕事内容がそれほど変わらないのであれば、負担や緊張感が抑えられミスや焦りを防ぐことができますよ。とくに決まった時間に出退勤できる勤務形態や、シフト制でもあらかじめ予定がわかる職場は、双極性障害を持つ人にとって働きやすい環境といえるでしょう。
残業・休日出勤などがなく自分のペースで働ける
双極性障害の人にとって、残業や休日出勤が少なく、自分のペースで働ける職場は心身の安定を保ちやすい環境です。気分の波があるなかで無理に仕事を続けると、疲労が蓄積して症状が悪化するケースもあります。そのため、突発的な残業や出社が発生しにくい環境が好ましいといえるでしょう。
また、仕事の進め方を自分で調整できる裁量のある働き方も理想的です。集中しやすい時間帯に作業を進められる、ペース配分を任せてもらえるといった職場なら、体調の波をうまくコントロールしながら働けます。加えてテレワークや時短勤務といった柔軟な勤務形態を導入している企業も、双極性障害の人にとって働きやすい環境です。
双極性障害の人が向いている職種・仕事には何がある?
双極性障害の人が向いている職種や仕事は、大きな変化のない単純作業や自分のペースで働ける在宅ワークなどが挙げられます。以下でおすすめの職種・仕事を紹介しているので、自分に向いていそうなものがあるかチェックしてみてください。
事務補助やデータ入力などのオフィスワーク
双極性障害の人には、安定した環境で取り組める事務補助やデータ入力といったオフィスワークが向いている可能性があります。業務内容が比較的ルーティン化されており、急な変化が少ないため気分の波に左右されにくく、双極性障害でも働きやすいといえるでしょう。
またオフィスワークは勤務時間が一定のケースが多く、過度な体力負担が少ない点もメリット。仕事もパソコン操作や書類整理、データチェックなど、自分のペースで進められる業務がメインで、体調に合わせた働き方がしやすい環境が整っています。集中しやすい作業空間や明確な業務手順がある職場であれば、より安定して長く働き続けることができるでしょう。
軽作業をはじめとしたシンプルな作業内容の現場
軽作業などのシンプルな作業を中心とした仕事も、双極性障害の人に向いている職種のひとつです。例えば製品の検品・梱包・シール貼り・仕分けなど、決められた手順に沿って行う作業なら、複雑な判断や対人コミュニケーションを必要としないぶん、感情に揺れがあっても働きやすいといえます。
また作業の流れが一定であるため、仕事のリズムを保ちやすいのも利点。さらに身体を適度に動かすことで、気分の切り替えがしやすくなるケースも考えられるでしょう。加えて勤務時間や作業量が安定している職場であれば、無理をせず自分のペースで働ける環境を整えられますよ。
内職やライティング、デザインなど在宅でできる仕事もおすすめ
在宅でできる仕事は、双極性障害の人にとって働きやすい選択肢のひとつです。内職やライティング、デザインなどの仕事は自宅で自分のペースを守りながら取り組めるため、症状にあわせて柔軟にスケジュールを調整できます。また1人だけで作業ができれば、人間関係のストレスが少なく、静かな環境で集中できる点もメリットです。
在宅ワークは通勤の負担がなく、体調が不安定な時期でも働き方を調整しやすいのも魅力。ただし、自宅での仕事は自己管理が何より重要。躁状態で仕事を頑張りすぎてしまったり、うつ状態でタスクをこなせず、クライアントに迷惑をかけてしまったりするケースも十分考えられます。無理をせず、休息と仕事のバランスを取ることが大切です。
双極性障害の人が就職・転職するために活用できる就労支援サービスを紹介
双極性障害の人が就職・転職するなら、就労支援サービスを活用するのがおすすめです。以下で、就職相談や就職活動を支援してくれるサービスを個別に紹介します。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、就労に関するさまざまな支援を受けられる就労支援サービスです。全国で3,000以上のNPO法人・社会福祉法人・一般的な企業などさまざまな団体が運営をしています。
主な支援内容は、業務における簡単なスキル・コミュニケーションの訓練や、体調や感情などをコントロールする方法のレクチャー、履歴書・職務経歴書作成サポートや模擬面接など。さらに就職したあとにも相談に乗ってもらえる定着支援も行われています。
なお、サービスを利用するには受給者証が必要です。受給者証は各自治体で申請を行うため、住んでいる自治体の障害福祉窓口に問い合わせてください。
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障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、都道府県・厚生労働省の認可を受けたNPO法人・社会福祉法人・医療法人などが運営する就労支援サービス。就職以外にも生活関連の支援もセットで行っています。
支援内容としては、面接を通して困りごとや希望を相談できる就職準備支援、履歴書添削や模擬面接、就職条件のすり合わせなどを行う就職活動支援、そして就職後にも定期的に悩み事の相談や、就職先への働きかけも行ってくれます。
参照:
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは47都道府県にある支援機関で、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営しています。
支援内容はカウンセラーによる職業相談・適職評価やビジネススキルの訓練、書類添削・模擬面接などの職業準備・転職活動支援がメイン。就職後も専門家が就職先に働きかけ、本人・職場双方が働きやすい環境を整えられるようサポートしてくれます。
参照:
ハローワーク
ハローワークは厚生労働省が運営する就労支援機関です。一般的な仕事以外にも、障害がある人向けに相談窓口が設置されていて、専門担当者が就職活動を手助けしてくれますよ。
転職・就職に関する相談から、求人紹介・履歴書添削・模擬面接・志望企業への連絡など、さまざまなサポートを行っています。加えて、一定期間働いてから正式な雇用契約をする障害者トライアル雇用なども利用可能です。
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まとめ
今回は、双極性障害の人の特徴や困りごとをふまえたうえで、長く仕事を続けるための働き方の工夫や向いている仕事、就職に役立つ就労支援サービスなどを解説しました。
双極性障害があっても、長期的に働くことは十分現実的です。ぜひ本記事を参考にして、仕事を無理なく、長く続けられる道筋を見つけてみてください。