公開日:2025.12.05
発達障害グレーゾーンの人に向いている仕事とは?特性別の働き方や就職・転職のポイント
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- 発達障害グレーゾーンで仕事がうまくいかず、悩んでいる人も多いのではないでしょうか。グレーゾーンは障害の程度は軽度なものの、業務や人間関係での困りごとを抱えがち。とはいえ、働き方を工夫したり、自分に向いている仕事を選んだりすれば、心身の負担を抑えて働くことは十分可能です。今回は、発達障害グレーゾーンの人の特徴を紹介し、働き方で工夫したいポイントや向いている仕事、就職・転職に役立つ就労支援サービスなどを解説します。発達障害グレーゾーンで悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。
発達障害グレーゾーンとは?なぜ診断がつかないの?
発達障害グレーゾーンとは、発達障害の特性に当てはまっているものの、確定診断には至らない状態を指します。あくまで状態を示しているので、正式な疾患・診断名ではないことを理解しておきましょう。
特性の程度は多くの場合軽度ですが、特性が理由で仕事がうまくいかないケースも少なくありません。また発達障害であると名言しづらいため、周りから怠けている、やる気がないと誤解され、ストレスを抱えてしまうケースもよく見られます。
発達障害の特性が見られても診断がつかないのは、症状の現れ方や程度が人によって大きく異なるのが理由。発達障害の診断は特性の有無だけでなく、生活にどの程度の支障が出ているかも基準になります。例えば特性があっても日常生活で大きな困りごとが見られない場合は、発達障害と診断されないケースもあるのが実情です。
また、発達障害の特性は連続的(スペクトラム)に存在しており、定型発達の人にも似た傾向が少なからず見られます。そのため、ここからが発達障害という明確な線引きが難しいのも理由のひとつ。さらに、ストレスや環境の影響で症状の出方が変わることも多く、タイミングによって診断結果が異なることもあります。
発達障害は大きく分けて3タイプ!仕事ではどんな困りごとがある?
発達障害グレーゾーンは、大きく分けてADHD(注意欠如多動症)・ASD(自閉スペクトラム症)・SLD(限局性学習症)の3つのタイプがあり、それぞれ特性や仕事で直面しやすい困りごとが異なります。以下で個別に解説しているので、自分に当てはまるタイプを参照してみてください。
ADHD(注意欠如・多動障害)は不注意や他動性などの特性がある
ADHDは、集中力を保つことが難しかったり、思いつきですぐ行動に移したりするなどの傾向が見られる発達障害です。主な特徴は不注意・多動性・衝動性が挙げられます。
例えば不注意の特性が強い人は、仕事の優先順位をつけるのが苦手だったり、書類の提出や報告をうっかり忘れてしまったりすることがあります。多動性は、落ち着いてじっとしているのが難しく、会議中にそわそわする、頭の中に次々とアイデアが浮かんで集中が途切れるなどの症状が特徴的。
衝動性が目立つ場合は、人の発言を遮ってしまったり、思いつきで行動して後から後悔したりするケースがあります。
ASD(自閉スペクトラム症)の人はコミュニケーションが苦手な場合が多い
ASDの人は、他者とのコミュニケーションや、社会的な関係づくりに困難を感じやすい傾向があります。会話の流れや相手の意図を読み取るのが苦手なので、空気が読めない、協調性がないと誤解されることも少なくありません。
ASDの特性は人によって異なりますが、一般的には興味や関心の偏り・感覚の過敏さ・こだわりの強さなどが見られます。例えば細かい作業を丁寧に行うことが得意な一方で、急な予定変更や曖昧な指示に強いストレスを感じるケースも。
また、会話の中で雑談やあいづちをうまく返せず、必要以上に緊張してしまう人もいます。
SLD(限局性学習症)は読み書き・計算などに困難を感じる
SLDは、知的な能力には問題がないにもかかわらず、読み書き・計算など特定の学習分野に困難を感じるのが特性です。例えば文字を読むときに似た形の文字を混同してしまったり、文章を理解するのに人より時間がかかったりすることがあります。また、数字を扱うときに桁の感覚がつかみにくい、計算手順を覚えるのが難しいといった症状も特徴です。
仕事での困りごとには、報告書やメールの作成、数値管理などの業務に時間がかかるなどがあります。そのため、自分は仕事が遅いと思い詰めて自信を失ってしまう場合も。
健常者から見ると単純なミスが多くなりがちなので、周囲から誤解されやすい傾向があります。
生きづらさを感じすぎると二次障害の症状が出てしまうことも
発達障害グレーゾーンの人は、日常生活や職場での小さなつまずきが積み重なることで、生きづらさを感じやすくなるのも特徴です。ストレスがかかり続けると自己否定感が生まれ、別の疾患や特性が現れる二次障害につながることがあります。
二次障害でよく見られるのは、抑うつ気分・不眠・過食や拒食・強い不安・意欲の低下など。とくに自分を追い込みすぎるタイプの人ほど、気づかないうちに心身のバランスを崩してしまう傾向があるため注意が必要です。
二次障害のリスクを防ぐには、無理をしないことや、早めにSOSを出すのが重要。
疲れが取れない、気分が落ち込みやすい、仕事に行くのがつらいと感じたら、心療内科をはじめとした医療機関へ相談するとよいでしょう。
発達障害グレーゾーンの人が仕事を続けやすくするコツ・働き方
発達障害グレーゾーンの人が仕事を長く続けるには、働き方の工夫が必須です。以下で、自分の得意な仕事を活かす方法や職場へ理解してもらうためのコツを解説しているので、参考にしてください。
自分の苦手なことをサポートできる工夫をすれば、仕事の負担が減る
発達障害グレーゾーンの人が仕事を長く続けるためには、自分の苦手なことをサポートできる工夫をするのがおすすめです。苦手な仕事・作業を極力自動化したり、省略したりすると仕事の負担やミスを減らせるでしょう。
例えば事務的作業が苦手なADHD傾向の人なら、予定をアプリやリマインダーで管理するといった工夫が効果的です。ASD傾向の人なら、仕事のルールや手順を明確にしておけば混乱せずに作業を進められるでしょう。読み書きや数字の処理が不得手なSLD傾向のある人は、音声入力や読み上げ機能を使って事務作業を補うのもおすすめです。
いずれの場合も、自分の特性にあわせて単純化や仕組み化するのが効果的。
苦手な行動を洗い出して、どのような工夫ができるか考えて、実際に実行してみることで快適に仕事を進められるようになるでしょう。
特性を正直に伝えることで、上司や同僚の理解が得やすくなる
発達障害グレーゾーンの人が職場で長く働くためには、特性を一人で抱え込まず、上司や同僚に正直に伝えることが大切です。周囲に理解してもらえれば、誤解や不安を減らし、働きやすい環境を整えやすくなりますよ。相談をためらう人も多いかもしれませんが、伝え方を工夫すれば信頼関係を築きつつ、自分の特性に合ったサポートを受けられる可能性が高まります。
伝えるときのポイントは、要望を具体的に話すこと。例えばADHD傾向の人なら「急な予定変更があると混乱してしまうので、できれば前日に共有してもらえると助かります」と伝えると、相手も理解しやすくなるでしょう。ASD傾向の人であれば「口頭での指示より、メモをもらえると確認しやすいです」といった対応をお願いすると効果的です。SLD傾向の人の場合は「数字の入力が苦手なので、ダブルチェックしてもらえると助かります」のようにサポートを希望してみましょう。
なお、現在は民間企業にも合理的配慮の提供が義務化されています。合理的配慮とは、障害者が健常者と同じように働けるように、企業が労働環境を整備することを指す取り組みです。なお障害者手帳がなくとも、本人が求めれば過度な負担にならない程度に措置を講じる必要があります。そのため、発達障害グレーゾーンでも配慮の対象になる可能性は十分。仕事での困りごとがある場合は、積極的に相談してみるとよいでしょう。
参照:
発達障害グレーゾーンに向いている仕事とは?特性別に解説
発達障害グレーゾーンに向いている仕事は、タイプごとに異なります。以下で、ADHA・ASD・SLD別に適した仕事・職種を紹介しているので自分の特性にあったものを参照してください。
ADHDは営業・企画・クリエイティブ職など行動型の仕事がおすすめ
ADHDの傾向がある人には、営業・企画・クリエイティブ職など、行動力や発想力を活かせる仕事がおすすめです。ADHDの人は興味のあることに集中力を発揮できるタイプが多いため、向いている仕事のなかでも自分の好きな業務を行える職種を選ぶと働きやすいといえます。
例えば行動が速く、初対面の相手とも臆せず話せるADHDタイプの人なら、営業職はうってつけの職種だといえるでしょう。企画職やマーケティング職では、発想力や好奇心を活かして新しいアイデアを提案できる可能性がありますよ。
次々と発想が湧くタイプの人には、デザイン・ライティング・映像制作などのクリエイティブ職もおすすめです。クリエイティブの現場では、基本スキルに加えて自由な発想が求められます。発想力の高いADHD傾向の人の能力を活かしやすい業種だといえるでしょう。
ASDはエンジニア・データ分析・デザインなど集中力を活かせる仕事がぴったり
ASDの傾向がある人には、エンジニア・データ分析・デザインなど、集中力と正確さを活かせる仕事が向いています。ASDの人は興味を持った分野に深く没頭できる反面、曖昧な指示や人間関係にはストレスを感じやすいのが特徴。そのため、明確なルールがあり、論理的な判断ができ、一人で集中できる時間が確保できる仕事ほど能力を発揮できる可能性があるといえるでしょう。
例えばエンジニア職は、明確な手順やルールの中で作業を進めることが多く、コツコツと正確に作業することが得意なASDタイプにぴったり。プログラミングやシステム構築などは論理的な思考力と粘り強さが求められるため、特性が強みとして活きやすい職種といえます。
また、データ分析や研究職もおすすめです。数字や情報を丁寧に扱うことが得意で、細かい違いに気づけるASDの特性は、分析や検証作業で大きな力になるでしょう。ほかにもデザインやイラスト制作のように、単独で集中しながら作り上げる仕事も好相性です。
SLDは接客・調理・介護など体を動かす仕事が向いている
SLDの傾向がある人には、接客・調理・介護など、体を動かす仕事が向いています。SLDは読み書きや計算といった学習分野で困難を感じることがあるため、言葉や数字以外で進められる仕事で力を発揮しやすいといえるでしょう。
例えば接客業では、相手の表情を読み取ったり、場の雰囲気を感じ取って行動したりするスキルが求められるため、読み書きや計算能力の必要はそれほどありません。調理の仕事や介護なども同様です。いずれも読み書き・計算よりもコミュニケーション能力が求められる職種なので、対人スキルに自信がある人なら無理なく続けられるでしょう。
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発達障害グレーゾーンの人が就職・転職で活用できる就労支援サービス
発達障害グレーゾーンの人が就職や転職を考える際には、ひとりで悩まず就労支援サービスを活用するのがおすすめです。例えば全国各地にある就労移行支援事業所では、ビジネスマナーやパソコン操作、コミュニケーションなどのスキルを身につける訓練を受けられます。
また履歴書や職務経歴書の作成、模擬面接といった就職準備のサポートも充実しており、就職後には定着支援として職場での困りごとを相談できる体制も整っています。ただし、利用には自治体が発行する受給者証が必要です。
障害者就業・生活支援センターは、仕事と生活の両面から支援してくれる機関。カウンセラーとの面談を通じて、就職に向けた課題整理や希望条件の相談ができるほか、履歴書添削や面接練習なども受けられますよ。就職後も定期的にフォローしてくれるため、働きながら不安や悩みを相談できる環境が整っています。
全国47都道府県に設置されている地域障害者職業センターは、専門のカウンセラーが職業適性を評価し、自分に合った仕事を見つけるためにサポートしてくれるのが特徴。ビジネススキルの訓練や職場への助言も行われ、企業側への理解促進にも力を入れています。
なおハローワークにも、発達障害や発達障害グレーゾーンの人を対象とした専門窓口があります。就職相談・求人紹介・履歴書の添削・模擬面接などのサポートが用意されていて、一定期間の試用を経て本採用につなげるトライアル雇用制度を利用することも可能です。
まとめ
今回は、発達障害グレーゾーンの人の特徴を紹介し、働き方で工夫したいポイントや向いている仕事、就職・転職に役立つ就労支援サービスなどを解説しました。
発達障害グレーゾーンは診断名がつかないため、自分ひとりで悩みを抱えたり、周囲から誤解されたりしがちです。とはいえ、働き方を工夫する、特性を活かした仕事を選ぶなどすれば、心身の負担を抑えて働くことは十分可能です。発達障害グレーゾーンで悩んでいる人は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。