最終更新日:2025.4.22
障害者手帳とは?種類や等級、申請方法からメリット・デメリットまで徹底解説
- ホーム
- コラム
- 「法律・制度」のコラム
- 障害者手帳とは?種類や等級、申請方法からメリット・デメリットまで徹底解説

- このコラムのまとめ
- 障害者手帳の基本知識から申請方法、メリットまで徹底解説。身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳の種類や等級、取得方法、受けられる支援サービスを詳しく紹介。手帳がなくても利用できる支援制度も解説しています。障害のある方の生活をサポートする情報が満載です。
もくじ
もっと見る
障害者手帳とは?基本的な知識と役割
障害者手帳とは、一定以上の障害のある方に対して交付される公的な証明書です。日本には「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」の3種類があり、これらを総称して「障害者手帳」と呼んでいます。障害者手帳は、障害のある方々の生活支援や社会参加を促進するための重要なツールとなっています。
障害者手帳の定義と目的
障害者手帳は障害の種類や程度を公的に証明するもので、各種福祉サービスや支援制度を利用する際に必要となるものです。手帳の交付を受けることで、日常生活における様々な支援や経済的な負担軽減を受けることができます。
障害者手帳の主な目的は以下の通りです:
- 障害のある方の社会参加を促進すること
- 障害のある方々が必要な支援やサービスを受けやすくすること
- 経済的な負担を軽減し、生活の質を向上させること
- 就労機会を拡大し、自立した生活を支援すること
3種類の手帳はそれぞれ異なる根拠法令に基づいて運用されています。身体障害者手帳は「身体障害者福祉法」、精神障害者保健福祉手帳は「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に基づいています。一方、療育手帳は法律ではなく、厚生労働省の通知をもとに各自治体が運営する制度です。
障害者手帳の歴史と制度の変遷
日本における障害者手帳制度は戦後の社会福祉政策の発展とともに整備されてきました。1949年(昭和24年)に身体障害者福祉法が制定され、身体障害者手帳の制度が始まりました。当初は戦傷者や労働災害による障害者の支援が中心でしたが、徐々に対象範囲が拡大されていきました。
精神障害者保健福祉手帳は比較的新しく、1995年(平成7年)に精神保健福祉法の改正によって創設されました。療育手帳は1973年(昭和48年)に厚生省(現・厚生労働省)の通知により制度化されました。知的障害者への支援を目的としており、地域によって「愛の手帳」「みどりの手帳」など様々な名称で呼ばれています。
近年では、2016年に「障害者差別解消法」が施行され、障害を理由とする差別の禁止や合理的配慮の提供が法的に義務付けられるなど、障害者を取り巻く法制度は大きく進展しています。また、2013年に施行された「障害者総合支援法」により、障害者手帳を持つ方々への包括的な支援体制が整備されました。
障害者手帳制度は時代とともに変化し、障害のある方々のニーズに合わせて拡充されてきました。現在では単なる障害の証明だけではなく、障害のある方々の社会参加と自立を促進するための重要なツールとして機能しています。
障害者手帳の種類と対象者
障害者手帳は「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」の3種類があります。それぞれ対象となる障害の種類や条件が異なり、障害の特性に応じた支援を受けるための基盤となっています。ここでは各手帳の対象となる方について解説します。
身体障害者手帳の対象となる方
身体障害者手帳は、身体障害者福祉法に基づいて交付される手帳で、身体の機能に永続する障害がある方が対象です。対象となる障害は大きく分けて視覚障害、聴覚・平衡機能障害、音声・言語・そしゃく機能障害、肢体不自由、内部障害の5つに分類されます。
視覚障害の基準
視覚障害は、両眼の視力や視野の状態によって等級が判定されます。視力は矯正視力(メガネやコンタクトレンズをつけた状態での視力)で測定され、両眼の視力の和や視野の状態によって等級が決定されます。
聴覚障害の基準
聴覚障害は、聴力レベルや平衡機能の障害によって等級が判定されます。聴力は聴力検査によって測定され、両耳の聴力レベルや聴こえる音の大きさによって等級が決定されます。
内部障害の基準
内部障害は、体の内部の機能障害を指し、心臓、腎臓、呼吸器、ぼうこう・直腸、小腸、肝臓、免疫系の機能障害が対象です。これらの臓器や機能の障害によって日常生活に支障がある状態が認定の対象となります。
精神障害者保健福祉手帳の対象となる方
精神障害者保健福祉手帳は、精神疾患により長期にわたり日常生活や社会生活に制約がある方を対象としています。統合失調症、気分障害、発達障害などの精神疾患が対象となり、初診から6ヶ月以上経過していることが申請条件となります。
統合失調症の方の場合
統合失調症は、思考や感情、行動などの精神機能に障害が生じる疾患です。幻覚や妄想、思考の混乱などの症状が特徴的です。統合失調症の方が精神障害者保健福祉手帳を取得する場合、症状の重さや日常生活への影響度によって等級が判定されます。
うつ病・双極性障害の方の場合
うつ病や双極性障害(躁うつ病)などの気分障害も精神障害者保健福祉手帳の対象となります。これらの疾患では、抑うつ状態や躁状態により日常生活や社会生活に支障をきたす状態が続くことがあります。
療育手帳の対象となる方
療育手帳は、知的障害のある方を対象とした手帳です。厚生労働省の通知に基づき各自治体が独自の基準で運用しているため、名称や判定基準は地域によって異なる場合があります。東京都では「愛の手帳」、埼玉県では「みどりの手帳」などと呼ばれることもあります。
知的障害の判定基準
知的障害の判定は、知能検査(IQテスト)や社会生活能力、日常生活での適応状況などを総合的に評価して行われます。一般的にIQ(知能指数)が70未満の場合に知的障害と判定されることが多いですが、社会生活能力や適応行動も重要な判断材料となります。
障害者手帳の種類や対象範囲を理解することで、自分や家族に必要な支援を受けるための第一歩となります。どの手帳が適しているか迷った場合は、医療機関や自治体の障害福祉窓口などに相談してみることをおすすめします。
障害者手帳の等級と認定基準
障害者手帳には障害の種類や程度に応じて等級が設定されています。この等級は障害の重さを示すとともに、受けられる支援やサービスの内容を決める重要な基準となります。各手帳の等級制度と認定基準について解説します。
身体障害者手帳の等級(1級〜6級)
身体障害者手帳の等級は1級から6級まであり、数字が小さいほど障害の程度が重いことを示します。等級は障害の部位や機能障害の程度によって判定され、身体障害者福祉法に基づく身体障害者障害程度等級表に詳細な基準が定められています。
等級 | 障害の程度 | 主な例 |
---|---|---|
1級 | 最重度 | 両眼の視力の和が0.01以下、両上肢の機能を全廃したもの |
2級 | 重度 | 両眼の視力の和が0.02以上0.04以下、両耳の聴力レベルが100デシベル以上 |
3級 | 中度〜重度 | 両眼の視力の和が0.05以上0.08以下、一上肢の機能を全廃したもの |
4級 | 中度 | 両眼の視力の和が0.09以上0.12以下、両耳の聴力レベルが80デシベル以上 |
身体障害者手帳では7級という区分も存在しますが、7級単独では手帳は交付されません。ただし、7級の障害と他の7級以上の障害が重複する場合は、その組み合わせにより6級以上として認定され、手帳が交付されることがあります。
精神障害者保健福祉手帳の等級(1級〜3級)
精神障害者保健福祉手帳の等級は1級から3級までの3段階で、身体障害者手帳と同様に数字が小さいほど障害の程度が重いことを示します。精神疾患の種類や症状の程度、生活への影響などを総合的に評価して等級が判定されます。
等級 | 障害の程度 | 日常生活・社会生活の状態 |
---|---|---|
1級 | 重度 | 日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの。他人の援助を受けなければ、ほとんど自分の用を弁ずることができない程度。 |
2級 | 中度〜重度 | 日常生活が著しい制限を受けるか、または著しい制限を加えることを必要とする程度のもの。 |
3級 | 軽度〜中度 | 日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、または制限を加えることを必要とする程度のもの。 |
精神障害者保健福祉手帳は2年ごとに更新が必要で、その際に現在の状態に基づいて等級が再判定されます。症状の改善や悪化に応じて等級が変更されることもあります。
療育手帳の等級(A・B)
療育手帳は知的障害のある方を対象としており、基本的には「A(重度)」と「B(中・軽度)」の2段階に区分されています。ただし、実際の運用は自治体によって異なり、より細かい区分を設けている地域もあります。
療育手帳の等級判定では、知能指数(IQ)と社会生活能力(日常生活における適応状況)の両面から総合的に判断されます。一般的には以下のような基準が用いられますが、自治体によって多少の違いがあります。
等級 | 知能指数(IQ)の目安 | 日常生活の状態 |
---|---|---|
A(重度) | 概ね35以下 | 常に介護が必要、または問題行動があるなど |
B(中・軽度) | 概ね36〜70程度 | 一定の支援があれば日常生活が可能な状態 |
障害者手帳と障害年金の等級の違い
障害者手帳の等級と障害年金の等級は別の制度であり、それぞれ独自の基準で判定されます。障害者手帳は現在の障害の状態に基づいて判定されるのに対し、障害年金は「働けない」または「働きにくい」状態に対して支給されます。
障害者手帳がなくても障害年金を受給できる場合や、逆に障害者手帳を持っていても障害年金の対象とならない場合もあります。それぞれの制度の目的や判定基準の違いを理解し、適切な支援を受けることが重要です。
障害者手帳の申請方法と流れ
障害者手帳を取得するためには、それぞれの手帳の種類によって異なる申請手続きが必要です。ここでは各手帳の申請手順や必要書類について解説します。申請は基本的にお住まいの市区町村の障害福祉窓口で行います。
身体障害者手帳の申請手順
身体障害者手帳の申請は、指定医師の診断を受け、必要書類を市区町村の窓口に提出します。申請から交付までは1~2ヶ月程度かかります。必要書類としては、申請書、指定医の診断書・意見書、顔写真、本人確認書類などがあります。基本的に更新は不要ですが、障害の状態が変化する可能性がある場合は再認定が必要なことがあります。
精神障害者保健福祉手帳の申請手順
精神障害者保健福祉手帳の申請も市区町村の窓口で行います。精神科医の診断書または障害年金の証書の写しなどが必要です。有効期限は2年間で、継続して手帳を所持するためには更新手続きが必要です。申請から交付までは1~3ヶ月程度かかります。
療育手帳の申請手順
療育手帳の申請は、まず児童相談所(18歳未満)または知的障害者更生相談所(18歳以上)での判定を受けます。その後、判定結果をもとに市区町村の窓口で申請手続きを行います。自治体によっては定期的な更新や再判定が必要な場合があります。
手帳の更新手続きについて
精神障害者保健福祉手帳は2年ごとの更新が必要です。療育手帳は自治体によって更新の有無や期間が異なります。身体障害者手帳は基本的に更新不要ですが、状態変化の可能性がある場合は再認定が必要なことがあります。更新手続きは新規申請と同様の流れですが、一部簡略化されている場合もあります。
障害者手帳を取得するメリット
障害者手帳を取得することで、様々な支援やサービスを受けることができます。これらのサービスは障害のある方の生活をより豊かで便利なものにするとともに、経済的な負担を軽減する役割も果たします。主なメリットを紹介します。
経済的な支援・助成が受けられる
障害者手帳を持つことで、各種手当や年金の受給対象となる可能性があります。また、所得税や住民税の障害者控除、相続税の軽減、自動車税・自動車取得税の減免などの税制上の優遇措置を受けることができます。これらの経済的支援は、障害のある方の生活の安定に大きく貢献します。
医療費の助成制度
自立支援医療制度や重度障害者医療費助成制度などを利用することで、医療費の負担を軽減できます。また、身体障害者手帳を持つ方は、補装具費支給制度や日常生活用具給付等事業などを利用できる場合があります。
日常生活での割引やサービス
公共交通機関の運賃割引(鉄道、バス、航空機など)、公共施設の入場料減免、NHK放送受信料の減免、携帯電話料金の割引など、日常生活における様々な割引サービスを受けることができます。これらのサービスは、障害のある方の社会参加を促進する役割を果たしています。
就労支援と就職活動のメリット
障害者手帳を持つことで、障害者雇用枠での就職が可能になります。また、ハローワークの専門窓口や障害者就業・生活支援センターなどの就労支援サービスを利用できます。職場では、障害者差別解消法に基づく合理的配慮を求める根拠となります。これらの支援により、自分に合った働き方を見つけることができます。
障害者手帳を取得する際のデメリットや懸念点
障害者手帳の取得には多くのメリットがありますが、一方で取得をためらう理由となる懸念点も存在します。ここでは、障害者手帳を取得する際に感じるかもしれない不安や心配について取り上げます。
プライバシーや周囲の目に関する懸念
障害者手帳を持つことで、自分の障害が周囲に知られてしまうのではないかという不安があります。しかし、障害者手帳の取得情報は厳重に管理されており、本人の同意なく第三者に開示されることはありません。手帳を提示するかどうかは基本的に本人の判断によるもので、必要な場面でのみ活用することができます。また、精神障害者保健福祉手帳は表面には「障害者手帳」としか記載されておらず、プライバシーに配慮されています。
就職・転職活動への影響
障害者手帳を取得することで、就職や転職に不利になるのではないかという懸念もあります。しかし、障害者手帳を持っていても一般枠で応募することは可能で、障害について開示するかどうかは本人の選択です。また、障害者雇用枠での就職には、障害特性に合わせた業務調整や配慮が受けられるというメリットもあります。近年は多様性を重視する企業も増えており、障害者雇用に対する理解も深まってきています。
心理的な抵抗感への向き合い方
自分自身を「障害者」として認めることへの心理的な抵抗感も大きな懸念点です。この心理的な抵抗感に向き合うためには、障害を個人の問題ではなく社会との関係性の中で生じるものと考える「社会モデル」の視点を持つことや、障害者手帳を支援やサービスを受ける権利として捉えることが助けになります。また、同じような障害や困難を抱える人々とのつながりを持つことも重要です。障害者手帳の取得は強制されるものではなく、あくまでも本人の意思による選択であることを忘れないでください。
障害者手帳がなくても利用できる支援制度
障害者手帳は様々な支援サービスを受けるための重要なツールですが、手帳を持っていなくても利用できる支援制度もあります。障害の状態や生活上の困難に応じて、様々な機関やサービスを活用することができます。
相談できる窓口やサポート機関
障害の有無や手帳の有無にかかわらず、困りごとを相談できる窓口があります。基幹相談支援センター、精神保健福祉センター、発達障害者支援センターなどでは、障害に関する相談や情報提供を行っています。また、保健所・保健センターでは心身の健康に関する相談ができます。これらの相談窓口では、障害者手帳の取得についての相談も受け付けています。
就労に関する支援制度
就労に関しても、診断書があれば利用できる支援があります。ハローワークの「障害者向け専門窓口」では、診断書があれば相談できる場合があります。障害者トライアル雇用やジョブコーチ支援も、条件を満たせば診断書のみで利用できることがあります。また、うつ病などで休職中の方向けのリワーク支援や、若者サポートステーションなども障害の有無にかかわらず利用できます。
生活支援に関するサービス
自立支援医療(精神通院医療)は、精神疾患で通院している方であれば障害者手帳がなくても申請できます。また、障害年金も障害者手帳がなくても医師の診断書などに基づいて申請可能です。そのほか、日常生活自立支援事業や各種生活相談など、障害の状態によっては手帳がなくても利用できるサービスもあります。障害者手帳の取得を検討している段階でも、これらの支援制度を活用することで生活の質を向上させることができます。
まとめ:障害者手帳を最大限に活用するために
障害者手帳は、障害のある方々の生活をサポートし、社会参加を促進するための重要なツールです。手帳を最大限に活用するためには、自分の障害や等級について正しく理解し、利用できるサービスを積極的に調べることが大切です。
各手帳の特徴を理解し、適切なタイミングで申請や更新を行いましょう。また、障害者手帳による支援だけでなく、自立支援医療や障害年金など、他の制度と組み合わせることでより充実したサポートを受けることができます。
市区町村の障害福祉窓口、専門的な相談機関、当事者団体などを積極的に活用し、自分に必要な支援やサービスについての情報を得ることが大切です。分からないことがあれば、遠慮せずに相談しましょう。