公開日:2025.06.30

障害者総合支援法とは?対象者・サービス内容・利用方法を完全解説

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障害者総合支援法とは?対象者・サービス内容・利用方法を完全解説
このコラムのまとめ
障害者総合支援法の概要から、サービス内容、利用方法、費用負担、最新の法改正までを解説。障害のある方が地域で自分らしく暮らすために必要な支援体系を紹介し、実際の活用事例も交えながら、制度の課題と今後の展望についても考察しています。

障害者総合支援法の基本概念と理念

障害者総合支援法は、正式名称を「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」といい、2013年に施行された障害者と障害児を対象とした障害福祉施策を定めた法律です。この法律は、障害のある人が基本的人権を持つ個人として尊厳にふさわしい生活を送るために必要な支援を総合的に行うことを目的としています。

基本理念

障害者総合支援法は、以下の6つの基本理念に基づいて運営されています。

  • 障害の有無に関わらず全ての国民が個人として尊重されること
  • 障害の有無に関わらず全ての国民が相互に尊重し合いながら共生する社会を実現すること
  • 全ての障害者および障害児が可能な限り身近な場所で日常生活や社会生活に必要な支援を受けられること
  • 社会参加の機会が確保されること
  • 地域社会において選択の機会があり、他者との共生が妨げられないこと
  • 障害者および障害児が日常生活・社会生活を営むうえでの障壁を取り除くよう資すること

これらの理念は、障害によって差別されたり機会を奪われたりしないこと、そのために必要な支援を提供することを掲げています。

障害者総合支援法の最も重要な点は、障害のある人を「支援の対象」ではなく「権利の主体」として位置づけている点です。この考え方の転換が、現代の障害福祉の基盤となっています。

障害福祉専門家

共生社会の実現

障害者総合支援法は、「共生社会」の実現を目指しています。共生社会とは、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共に生きる社会のことです。この理念に基づき、障害者が社会の一員として地域の中で暮らせるよう、さまざまな支援が提供されています。

また、障害者が自分の生活のあり方を自ら選択でき、その実現のために必要な支援を受けられることも重要な概念です。

どこで誰と住むかという選択の自由や、社会参加の機会が保障されることにより、障害者の自己決定が尊重される社会を目指しています。

障害者総合支援法の対象者

障害者総合支援法では、障害の種類や程度に応じて様々な支援サービスが提供されています。ここでは、どのような人がこの法律の対象となるのかを詳しく見ていきましょう。

障害者総合支援法が対象とする人々

障害者総合支援法の対象者は、大きく以下の3つのカテゴリーに分けられます。

区分 対象者となる条件
18歳以上の対象者 ・身体障害者の方
・知的障害者の方
・精神障害者(発達障害者を含む)の方
18歳未満の対象者(障害児) ・身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)があり、支援を必要とする方
難病患者 ・厚生労働省が定める「指定難病」に該当し、日常生活や社会生活に制限がある方

特筆すべき点として、障害者自立支援法(障害者総合支援法の前身)では対象外だった発達障害と難病患者が含まれるようになったことは、大きな進歩と言えるでしょう。

障害者手帳を持っていなくても、必要な支援が受けられる場合があります。特に精神障害や発達障害、難病の方は、診断書などで支援の必要性が認められれば、サービスを利用できることがあります。

相談支援専門員

出典:

障害支援区分について

障害者総合支援法のサービスを利用する際、多くの場合「障害支援区分」の認定を受ける必要があります。障害支援区分とは、障害の程度や必要な支援の度合いを客観的に評価するための基準です。

障害支援区分は5つの項目について80項目におよぶ詳細な調査を行い、その結果に基づいて1(軽度)〜6(重度)の区分に認定されます。この区分によって、利用できるサービスの種類や支給量が決まります。ただし、訓練等給付の多くのサービスは、障害支援区分の認定を必要としない場合もあります。

出典:

障害者総合支援法のサービス体系

障害者総合支援法のサービス体系

障害者総合支援法に基づくサービスは、全国共通の「自立支援給付」と、地域の特性に応じた「地域生活支援事業」の2つの柱で構成されています。

これらのサービスは、障害のある方の生活をさまざまな側面からサポートする包括的な支援体系となっています。

自立支援給付のサービス

自立支援給付は、障害のある方の個々のニーズに応じて個別に支給決定が行われる全国一律のサービスです。主に以下の種類に分かれています。

介護給付のサービス

介護給付は、障害のある方が日常生活で必要とする介護サービスを提供するものです。居宅介護(ホームヘルプ)、重度訪問介護、同行援護、行動援護、短期入所(ショートステイ)、生活介護などがあります。

訓練等給付のサービス

訓練等給付は、障害のある方の自立した生活や就労を促進するための訓練や支援を提供するサービスです。自立訓練、就労移行支援、就労継続支援(A型・B型)、就労定着支援、共同生活援助(グループホーム)などがあります。

就労支援サービスを利用する際は、自分の状況や目標に合ったサービスを選ぶことが大切です。例えば、すぐに就職を目指すなら就労移行支援、働く経験を積みたいなら就労継続支援といった選択ができます。

就労支援員

相談支援と自立支援医療

相談支援では、計画相談支援や地域移行支援などが提供されます。自立支援医療は、更生医療、育成医療、精神通院医療の3種類があり、医療費の自己負担を軽減します。また、補装具費支給制度では、身体機能を補完・代替する用具の購入や修理費用が支給されます。

地域生活支援事業

地域生活支援事業は、障害のある方が地域で自立した生活を送るために、市区町村や都道府県が地域の特性やニーズに応じて実施する事業です。理解促進研修・啓発事業、相談支援事業、意思疎通支援事業、日常生活用具給付等事業、移動支援事業などがあります。

障害者総合支援法のサービス利用方法と手続き

障害者総合支援法のサービスを利用するためには、一定の手続きが必要です。ここでは、申請から利用開始までの流れと、必要な手続きについて解説します。

申請から利用開始までの流れ

障害福祉サービスの利用は、基本的に以下のステップで進みます。ただし、利用するサービスの種類によって手続きが一部異なる場合があります。

  1. 居住地の市区町村窓口で申請
  2. 障害支援区分の認定(介護給付の場合)
  3. サービス等利用計画案の作成・提出
  4. 支給決定
  5. サービス等利用計画の作成
  6. サービス利用開始

まず、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口に申請を行います。申請時には、障害の状況や希望するサービスについて相談し、必要書類を提出します。介護給付サービスを利用する場合は、障害支援区分の認定調査が行われます。

認定調査では、ありのままの状態を伝えることが大切です。「頑張ればできる」ではなく、「一人でできるか」「支援が必要か」という視点で回答しましょう。

相談支援専門員

サービス等利用計画の作成

障害福祉サービスを利用するには、「サービス等利用計画」が必要です。この計画は、本人の希望や障害の状況に応じて、どのようなサービスをどのように利用するかを具体的に示したものです。指定特定相談支援事業者が作成しますが、近くに事業者がない場合は、本人や家族が「セルフプラン」として作成することも可能です。

市区町村は、提出されたサービス等利用計画案と障害支援区分の認定結果をもとに審査を行い、支給決定します。

支給決定後、実際に利用するサービス事業所が決まれば、サービス担当者会議を経て「サービス等利用計画」が作成され、サービスの利用が開始されます。

計画相談支援の活用方法

「計画相談支援」は、サービス等利用計画の作成やモニタリングを行うサービスです。自分の希望や困りごとを具体的に伝え、定期的なモニタリングの際にサービスの効果を率直に伝えることで、より効果的な支援につながります。相談支援専門員は支援の専門家であり、困ったことがあれば積極的に相談することをお勧めします。

障害者総合支援法における費用負担

障害者総合支援法のサービスを利用する際には、一部自己負担が発生します。ここでは、利用者の負担額の仕組みや軽減措置について解説します。

利用者負担の仕組み

障害福祉サービスの費用は、原則としてサービス費用の1割を利用者が負担する「応益負担」の考え方を基本としています。しかし、障害のある方の経済状況に配慮し、世帯の所得に応じた「応能負担」の要素も取り入れられており、負担額には上限が設けられています。ただし、食費や光熱水費などの実費部分は自己負担となります。

負担上限月額と軽減措置

障害福祉サービスの利用者負担には、世帯の所得状況に応じて月額上限額が設定されています。18歳以上の障害者の場合、世帯の範囲は「本人と配偶者」となります。

区分 世帯の収入状況 負担上限月額
生活保護 生活保護受給世帯 0円
低所得 市町村民税非課税世帯 0円
一般1 市町村民税課税世帯
(収入がおおむね600万円以下)
9,300円
一般2 上記以外 37,200円

世帯の範囲が「本人と配偶者」となったことは大きな改善点です。以前は同居する家族全員が世帯の範囲となっていたため、親と同居する障害者は親の収入が高いと利用料も高額になっていました。

福祉事務所職員

出典:

自立支援医療・補装具の費用負担

自立支援医療(更生医療、育成医療、精神通院医療)の利用者負担も原則1割ですが、所得に応じた負担上限月額が設定されています。また、補装具費支給制度を利用する場合の自己負担額も原則1割で、生活保護世帯・市町村民税非課税世帯は0円、それ以外の世帯は37,200円が負担上限額となっています。

最新の法改正ポイント(2024年度)

障害者総合支援法は、障害のある方のニーズや社会状況の変化に応じて定期的に見直しが行われています。2024年度には新たな改正法が施行され、さまざまな制度の拡充が図られました。ここでは、2024年度の法改正の主なポイントについて解説します。

改正の背景と目的

2024年度の障害者総合支援法改正は、「障害者の地域生活の推進」「社会的ニーズに対する対応」「持続可能かつ質の高いサービスの実現」の3つを柱としています。この改正は、障害のある方の社会参加をさらに促進し、多様な障害特性やニーズに対応できる支援体制の構築を目指すものです。

サービス内容の拡充

2024年度の改正では、以下のようなサービス内容の拡充が行われました。

障害者等の地域生活の支援体制の充実

  • 相談支援体制の強化と基幹相談支援センターの機能強化
  • 地域生活支援拠点等の整備促進と24時間の相談対応体制の充実
  • 精神障害者の地域生活支援の充実とピアサポートの活用
  • 障害者の居住支援の充実とグループホームの整備

地域生活支援拠点の整備が進むことで、障害のある方やご家族の「いざという時の安心」が確保されます。特に親亡き後の生活に不安を抱える方々にとって、大きな支えとなるでしょう。

地域生活支援センター職員

出典:

報酬改定のポイント

2024年度の報酬改定では、感染症対策とBCP(事業継続計画)の強化が義務化され、ICT・デジタル技術の活用が促進されています。特にテレワークやオンラインでの相談支援など、場所や時間に縛られない柔軟なサービス提供が可能となりました。また、福祉・介護職員の処遇改善や研修体制の充実など、人材確保・育成の強化も図られています。

これらの改正により、障害のある方がより地域で自分らしく暮らせる環境づくりが進められています。具体的なサービス内容や利用条件については、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口にお問い合わせください。

障害者総合支援法の活用事例

障害者総合支援法のサービスは、利用者の状況に応じて組み合わせることで、より効果的な支援が可能になります。ここでは、実際にサービスを活用して生活や就労を実現した事例を紹介します。

就労を目指す方の支援事例

事例1:Kさんの場合(精神障害)

状況と課題 活用したサービス 効果と成果
・統合失調症の診断で退職
・通院費の経済的負担
・再就職への不安
・自立支援医療
・計画相談支援
・就労移行支援
・就労定着支援
・医療費の負担軽減
・職業訓練を受けて就職
・定着支援で安定就労

Kさんは自立支援医療制度を利用して治療費の負担を軽減しました。体調が安定してきた後、就労移行支援事業所でストレスコントロールや障害理解のプログラムを受講。約1年の訓練を経て事務職として就職し、就労定着支援を利用して安定して働き続けています。

就労支援では、「働くスキル」だけでなく「働き続けるスキル」を身につけることが重要です。自分の障害特性を理解し、無理なく続けられる働き方を見つけることが成功のカギとなります。

就労支援員

地域での生活を実現した事例

事例2:Aさんの場合(身体障害)

交通事故で右足に障害を負ったAさんは、退院後まず居宅介護サービスを利用して自宅での家事や入浴のサポートを受けました。同時に自立訓練(機能訓練)でリハビリを行い、補装具費支給制度を利用して歩行補助装具を購入。これにより移動の自由度が高まり、元の職場に復職することができました。

医療と福祉の連携事例

事例3:Bさんの場合(難病)

難病を発症したBさんは、計画相談支援を利用して包括的な支援計画を作成。日常生活では居宅介護サービスを利用し、症状の進行に伴い重度訪問介護に移行。自立支援医療制度で医療費負担を軽減し、日常生活用具給付事業で特殊寝台などの支給を受けました。医療と福祉のサービスを組み合わせた支援により、住み慣れた地域での生活を続けています。

障害者総合支援法の歴史と変遷

現在の障害者総合支援法は、日本の障害福祉施策の長い歴史の中で形作られてきました。ここでは、支援費制度から障害者総合支援法に至るまでの変遷について解説します。

支援費制度から障害者自立支援法へ

社会福祉基礎構造改革(2000年)

現在の障害者総合支援法の発端となったのは、2000年の社会福祉基礎構造改革です。この改革では、行政主導の「措置制度」から、利用者が自ら選択する「契約制度」への転換が図られました。社会福祉サービスの質と量の向上を目指し、事業参入の規制緩和が行われ、福祉サービスに競争原理が導入されました。

支援費制度の開始(2003年)

2003年に始まった支援費制度は、障害のある人が「保護の対象」から「権利の主体」へと位置づけられる重要な転換点となりました。利用者がサービスを選択できるようになりましたが、予想を上回るサービス利用による財源不足や地域間格差といった課題が浮上しました。

支援費制度は「選択と契約」という新しい考え方を導入した画期的な制度でしたが、財源の裏付けが不十分だったことが大きな課題でした。

福祉政策研究者

障害者自立支援法から障害者総合支援法への移行

障害者自立支援法の成立と課題(2006年)

2006年に施行された障害者自立支援法では、3障害のサービス体系の一元化や「障害程度区分」の導入、応益負担の導入などが行われましたが、サービス利用量に応じた負担増加などの問題から障害者自立支援法違憲訴訟が提起されました。

障害者総合支援法の制定(2013年)

2013年4月に施行された障害者総合支援法では、基本理念の新設、難病患者の対象追加、「障害支援区分」への変更など、障害者の権利を尊重する方向での改正が行われました。その後も2018年、2024年と定期的に改正が行われ、障害のある人のニーズや社会情勢の変化に対応した制度へと進化し続けています。

障害者総合支援法の課題と今後の展望

障害者総合支援法は、度重なる改正を通じて支援の充実が図られてきましたが、さまざまな課題も指摘されています。ここでは、現行制度の課題と今後の方向性について考察します。

現行制度の課題

利用者負担の問題

利用者負担については、応能負担が原則となりましたが、世帯単位の負担計算や複雑な負担区分、実費負担の存在など、経済的自立を阻む要因が残っています。

利用者負担の問題は、障害のある人の経済的自立と直結します。障害があることで追加的にかかる費用を社会全体で支える仕組みが求められています。

障害当事者団体代表

地域格差と制度の谷間

都市部と地方ではサービスの質や量に差があり、地域生活支援事業の内容も自治体によって異なります。また、65歳になると介護保険が優先されるなど、制度間の移行時に生じる問題も指摘されています。さらに、障害福祉人材の不足と質の向上も大きな課題となっています。

今後の制度改革の方向性

今後の障害者総合支援法の改革の方向性としては、以下のような点が挙げられます。

  • 地域共生社会の実現に向けた制度の再構築
  • 障害のある人を「主体」として位置づけた支援体制への転換
  • 意思決定支援やピアサポートの充実
  • ICTやデジタル技術を活用した支援の拡充
  • 障害者権利条約の理念に沿った制度改革の推進

障害者総合支援法が目指す「共生社会」の実現は、障害のある人だけでなく、すべての人にとって暮らしやすい社会の創造につながります。制度の課題を克服しながら、一人ひとりの尊厳が尊重される社会を目指して、さらなる改革が進められていくことでしょう。

まとめ:障害者総合支援法を正しく理解して活用しよう

障害者総合支援法は、障害のある方が地域で自分らしく暮らすための基盤となる重要な法律です。自立支援給付や地域生活支援事業など、多様なサービスを組み合わせることで、個々のニーズに合った支援を受けることができます。

障害福祉サービスは「使えるものは使う」という姿勢が大切です。必要な支援を受けることで、自分らしい生活や社会参加が広がります。

障害福祉相談員

お住まいの市区町村の窓口や相談支援事業所に相談しながら、自分に合ったサービスを見つけ、積極的に活用していきましょう。障害者総合支援法の理念である「共生社会」の実現は、障害の有無にかかわらず、誰もが尊厳を持って生きられる社会につながります。

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