公開日:2025.08.18

生活保護受給者が賃貸契約を成功させる完全ガイド|断られる理由と対策

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生活保護受給者が賃貸契約を成功させる完全ガイド|断られる理由と対策
このコラムのまとめ
「生活保護だと部屋を借りられない」と諦めていませんか?審査の壁は高いですが、住宅扶助などの制度を賢く使えば契約は十分に可能です。大家さんが審査で見るポイントや、初期費用を抑える公的支援の申請手順、保証会社の選び方など、現場で役立つ知識を解説。制度を味方につけて、安心して暮らせる住まいを確保しましょう。

賃貸契約を成功させるための5つの重要ポイント

生活保護を受給していても、適切な準備と対策を行えば賃貸契約は可能です。審査通過率を高めるための重要ポイントを解説します。

生活保護受給者対応の不動産会社を選ぶ

まず重要なのは、生活保護受給者の入居に理解のある不動産会社を選ぶことです。電話で事前に「生活保護を受給していますが、物件を紹介していただけますか?」と確認しておくと時間の無駄を防げます。

「家賃のとりっぱぐれ」を物理的にゼロにする

大家さんが入居を断る最大の理由は、差別感情よりも「家賃が回収できなくなること」への経済的な恐怖です。この不安を解消するには、精神論ではなく仕組みで対抗しましょう。
保証会社の利用は必須ですが、最近では生活保護受給者に特化した保証会社も増えています。「保証会社の審査に通っている」という事実提示こそが、大家さんにとって何よりの安心材料になります。

「代理納付」という最強の交渉カードを切る

生活保護受給者だけが使える、非常に強力な武器があります。それが「代理納付(住宅扶助の直接払い)」です。

これは、家賃分のお金(住宅扶助)を受給者本人に渡さず、役所から直接大家さんの口座へ振り込む制度です。
不動産屋を通じて「代理納付を利用するので、滞納リスクは実質ゼロです」と伝えてみてください。給料が不安定な一般の入居者よりも、役所から確実に振り込まれる受給者の方が、実は大家さんにとって「安全な入居者」になり得るのです。

代理納付制度を利用していることを伝えると、「毎月確実に家賃が入る」という安心感から審査通過の可能性が高まります。

ケースワーカー

生活保護は一時的であることを伝える

病気や怪我で一時的に働けない場合は、回復の見込みや今後の就労計画について説明しましょう。将来的な見通しを伝えることで、大家さんの理解を得られる可能性が高まります。

初期費用や条件について事前に確認する

生活保護受給者が利用できる住宅扶助には上限があります。この範囲内で契約できる物件を探し、初期費用についても住宅扶助(一時扶助)で対応できるか事前に確認しておきましょう。

これらのポイントを押さえることで、生活保護受給者でも賃貸契約を成功させる可能性が高まります。不安なことがあれば、必ずケースワーカーに相談してください。

出典:

賃貸契約から入居までの具体的な流れと手順

生活保護受給者が賃貸物件に入居するまでの流れを段階的に解説します。

住宅扶助の申請と許可取得

まず福祉事務所のケースワーカーに住宅扶助の申請と許可を得ましょう。勝手に引っ越しを決めると扶助が受けられなくなる可能性があります。この段階で地域ごとの住宅扶助上限額を確認しておくことが重要です。

条件に合う物件探し

住宅扶助の上限内で、生活保護受給者の入居に理解のある不動産会社で物件を探します。希望条件は必要最低限に絞るほうが選択肢が広がります。

申し込みは「見積書」をもらってからが本番

気に入った物件が見つかったら、すぐに契約できるわけではありません。まずは不動産屋から「初期費用の見積書」を作成してもらい、それを担当ケースワーカーに提出して「この金額なら支給できます」という許可(決裁)をもらう必要があります。
この許可が降りる前に勝手に契約を進めてしまうと、費用が支給されないトラブルになるため、順番を間違えないようにしましょう。

管理会社や大家さんは、あなたの服装や言葉遣いを見て「入居後に近隣とトラブルを起こさない常識的な人か?」をチェックしています。スーツを着る必要はありませんが、サンダルやジャージは避け、清潔感のある服装で行くだけで、審査の通過率はグッと上がりますよ。

不動産アドバイザー

「お金のタイミング」を調整する

入居審査に通ったら、いよいよ契約ですが、ここでも注意が必要です。役所から初期費用(敷金・礼金・火災保険料など)が振り込まれるまでには、申請から数日〜数週間のタイムラグがあるからです。

そのため、不動産屋にはあらかじめ「役所から入金があり次第、支払います」と伝え、支払い期日を調整してもらうのが一般的です。

  • 契約時:契約書と領収書(または請求書)は、後で役所に提出する証拠書類になります。必ずコピーを取って保管してください。
  • 引越し:引越し費用も支給対象ですが、多くの自治体で「数社(通常3社)からの相見積もり」を求められます。「一番安い業者」を選ぶことが支給の条件になるため、早めに見積もりを集めておきましょう。

住宅扶助制度を最大限に活用するテクニック

「上限額」を使い切り、住まいの質を上げる

地域別・世帯人数別の住宅扶助上限額を把握する

住宅扶助は、現金がもらえるわけではなく「家賃の実費」が支給される仕組みです。つまり、安い部屋に住んでも手元にお金が残るわけではありません。
それならば、地域の「上限額(級地基準)」ギリギリの物件を探すのが、最も賢い住まいの選び方です。防音性やセキュリティなど、少しでも条件の良い部屋に住むことは、精神的な安定にも直結します。

「特別基準」で上限を突破できるか検討する

原則の上限額は決まっていますが、やむを得ない事情がある場合は、例外的に家賃上限の上乗せ(特別基準)が認められることがあります。
「車椅子だから広い廊下が必要」「パニック障害でエレベーターが乗れないため1階必須」など、病状と物件条件の因果関係が認められれば、選択肢が広がります。

特別基準は自動的には適用されません。こちらから申請し、必要性をプレゼンする必要があります。「なぜその部屋でなければならないのか」を主治医に説明し、診断書や意見書に具体的な文言(例:段差のない住居が必要、等)を盛り込んでもらえるよう相談しましょう。

福祉事務所職員

「代理納付」を信頼の証にする

代理納付(役所から大家さんへの直接払い)は、単なる支払い代行ではありません。審査の厳しい賃貸市場において、「家賃滞納のリスクがゼロである」ことを証明する最強の身分証になります。
不動産屋に行く際は、「代理納付の手続きをします」と最初に宣言することで、門前払いの確率をぐっと下げることができます。

賃貸生活を長く続けるための注意点とアドバイス

せっかく見つけた部屋を「追い出されない」ために重要なポイントを紹介します。

近隣トラブルを防ぐためのマナー

苦労して契約した部屋ですが、入居後の行動には少しだけ注意が必要です。
万が一、騒音やゴミ出しなどの近隣トラブルが原因で退去を求められた場合、役所は「本人の責任による転居」と判断し、次の引越し費用を出してくれない可能性が高いからです。今の生活を守るために、以下のポイントだけは押さえておきましょう。

  • 「壁の薄さ」を意識する:家賃の上限内で借りられるアパートは、木造など音が響きやすい構造のことが多いです。深夜の洗濯機やテレビの音量は、自分が思う以上に隣に響いていると考え、夜間はヘッドホンを使うなどの自衛策が有効です。
  • ゴミ出しは「監視」されている:集合住宅で最もトラブルになりやすいのがゴミです。分別ルールを守らないとすぐに特定され、管理会社に通報されてしまいます。「指定の袋を使う」「曜日を守る」という基本だけで、信頼残高は貯まります。
  • 挨拶は「防犯カメラ」代わり:無理に仲良くなる必要はありません。すれ違った時に軽く会釈をするだけで、「怪しい人ではない」という印象を与えられ、何かあった時のクッション材になります。

集合住宅では「音」に関するトラブルが最も多いです。夜10時以降は特に静かに過ごすよう心がけましょう。

管理会社担当者

家賃滞納を絶対に避ける家計管理

生活保護費が支給されたら、最優先で家賃を支払う習慣をつけることが重要です。家賃と生活費を別々に管理し、固定費の支払い優先順位を明確にしましょう。代理納付制度を利用していない場合は特に注意が必要です。

ケースワーカーを「味方」につける

賃貸契約の初期費用や引越し代を出すのは、最終的には役所(ケースワーカー)です。そのため、普段から連絡を密にしておくことは、単なる義務ではなく、スムーズに決済印をもらうための「根回し」になります。
訪問調査を居留守したり、連絡を無視したりしていると、いざ転居したいと申し出ても「生活状況が把握できないので引越しは認められない」とストップがかかる可能性があります。相談は早め早めに行い、信頼関係を築いておきましょう。

生活保護受給者の賃貸契約に必要な書類と準備

生活保護受給者が賃貸契約を結ぶには、一般的な契約とは異なる書類や準備が必要です。スムーズに契約を進めるためのポイントを解説します。

スピード勝負に勝つための「書類準備」

良い物件はすぐに埋まってしまいます。特に生活保護の方は「役所の確認待ち」でタイムロスが発生しやすいため、以下の書類は物件探しの段階で手元に用意しておくと、不動産屋の動きが格段に良くなります。

必須書類 取得のポイントと役割
生活保護受給証明書 【最重要】役所の窓口で発行してもらえます。これは一般の方でいう「源泉徴収票(収入証明)」の代わりになるもので、大家さんに「家賃を払う能力がある」と証明する決定的な一枚です。
本人確認書類 マイナンバーカードや運転免許証など、顔写真付きのものがベストです。ない場合は、保険証+住民票などで代用できるか不動産屋に確認しましょう。
認印 シャチハタはNGです。100円ショップのもので構いませんので、朱肉を使うタイプの印鑑を常にカバンに入れておきましょう。

生活保護受給証明書は発行まで数日かかることがあります。物件探しの前に取得しておくと安心です。

ケースワーカー

保証会社利用時の注意点

保証会社を利用する場合は初回保証料(家賃の0.5~1ヶ月分程度)と更新料が必要です。これらの費用は住宅扶助の対象となることが多いため、ケースワーカーに相談しましょう。

ケースワーカーとの事前相談

契約前に必ずケースワーカーの承認を得ることが重要です。見積書や重要事項説明書のコピーを提出し、住宅扶助の規定内であることを確認してもらいましょう。

生活保護受給者が賃貸物件で断られる現状と理由

生活保護受給者が入居を断られる背景には、いくつかの共通した理由があります。これらを理解することで効果的な対策を講じることができます。

家賃の支払いに関する不安

大家さんや管理会社が最も懸念するのは家賃滞納のリスクです。生活保護費を家賃以外に使ってしまうケースや、退去時の原状回復費用が支払えないリスクを懸念しています。

実際には生活保護費は国から安定して支給されるため、一般の収入より確実性が高いこともあります。しかし過去のトラブル事例が影響しているのが現状です。

不動産管理士

契約手続きの複雑さ

福祉事務所との連絡調整や住宅扶助の申請手続きなど、一般的な契約より手間がかかるため、不動産会社が敬遠するケースがあります。特に小規模な不動産会社では対応経験が少ないことも理由の一つです。

過去のトラブル事例による先入観

一部の事例が全体のイメージとして捉えられ、「生活保護受給者=問題がある」という誤った先入観が生まれています。実際には個人差があり、一概に判断すべきではありません。

まとめ:「住まい」が変われば、人生の景色が変わる

賃貸契約には多くの壁がありますが、それらは「準備」と「対策」で乗り越えられる壁です。
感情的にならず、淡々と以下の勝利条件をクリアしていきましょう。

  • 場所を選ぶ:「住宅扶助の上限内」で探すことは、経済的な余裕を生みます。
  • 武器を持つ:「代理納付」と「保証会社」のセットで、大家さんの不安を先回りして消します。
  • 味方を作る:ケースワーカーを敵に回さず、早めの相談で協力を引き出します。

雨風をしのぎ、鍵をかけて眠れる「自分だけの空間」が確保できれば、生活の安定感は劇的に変わります。
それは将来的な自立や就労に向けた、何よりのエネルギー源になるはずです。妥協しすぎず、粘り強く。あなたらしい生活を送れる場所を、必ず勝ち取りましょう。

生活支援相談員

生活保護を受けていても、快適で安心できる住まいで暮らす権利は誰にでもあります。本記事の知識を活かして、前向きに住まい探しを進めていきましょう。

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