公開日:2025.08.20

精神障害者保健福祉手帳の等級とは?1級・2級・3級の違いとメリット・デメリットを徹底解説

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精神障害者保健福祉手帳の等級とは?1級・2級・3級の違いとメリット・デメリットを徹底解説
このコラムのまとめ
精神障害者保健福祉手帳の等級(1級〜3級)の違いと判定基準、各等級で受けられる税金控除や公共料金割引などの経済的メリット、就労支援などのサービス内容を解説。申請方法や更新手続き、取得の際の懸念点も紹介し、精神疾患のある方の社会参加と自立を支援するための制度について詳しく説明しています。

もくじ

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精神障害者保健福祉手帳の等級判定基準

精神障害者保健福祉手帳(以下、精神障害者手帳)は、精神疾患により長期にわたり日常生活や社会生活に制約がある方を対象に交付される手帳です。障害の程度に応じて1級から3級までの等級が設定されており、それぞれの等級によって受けられるサービスや支援内容が異なります。

精神障害者手帳の等級判定の仕組み

精神障害者手帳の等級は、次の観点から総合的に判断されます。

  • 精神疾患の存在の確認
  • 精神疾患(機能障害)の状態の確認
  • 能力障害(活動制限)の状態の確認
  • 精神障害の程度の総合判定

精神疾患の種類だけでなく、その症状によって日常生活や社会生活にどの程度の支障をきたすかが重要な判断基準となります。

1級の判定基準と特徴

1級は最も障害の程度が重い区分で、以下のような特徴があります。

1級の方は「日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」、つまり周囲の人の援助がなければ、ほとんど自力だけでは日常生活を送ることができない状態にある方です。

精神保健福祉士

具体的には、次のような状態の方が1級に該当します。

  • 医療機関への外出は、付き添いがなければできない
  • 食事の準備や片づけが一人ではできない
  • 金銭管理が困難
  • 他者とのコミュニケーションが著しく困難

2級の判定基準と特徴

2級は1級ほどではないものの、日常生活や社会生活に著しい制限を受ける状態です。

2級に該当する方の特徴は以下の通りです。

  • 付き添いなしでも外出はできるが、ストレスがかかる出来事が起こると、一人では対処できない
  • 清潔保持が自発的かつ適切におこなうのが難しい
  • 日常生活の中で適切な発言ができないことがある

3級の判定基準と特徴

3級は比較的軽度の障害で、日常生活や社会生活に一定の制限がある状態です。

3級に該当する方の特徴は以下の通りです。

  • 日常的な家事はできるが、状況や手順が変わると対応できないときがある
  • ひきこもりがちではない
  • 行動のテンポは、ほぼ周囲の人と合わせられる
  • ストレスのない状況では問題なく過ごせるが、環境変化に弱い

等級判定で重視されるポイント

精神障害者手帳の等級判定では、単に診断名や症状だけでなく、実際の生活における困難さが重視されます。判定で重要なポイントは以下の通りです。

判定ポイント 内容
日常生活への影響 食事、入浴、着替え、清掃などの基本的な生活動作をどの程度自立して行えるか
社会生活への影響 買い物、公共交通機関の利用、対人関係の構築などをどの程度自立して行えるか
就労能力 就労の可能性や、就労時に必要な配慮の程度

等級は固定されたものではなく、症状の変化に応じて更新時に見直されることがあります。病状が改善した場合は等級が下がることもありますし、悪化した場合は上がることもあります。

等級は「障害の重さ」を表すものであり、「その人の価値」を示すものではありません。等級が高いか低いかに関わらず、必要な支援を受けながら自分らしい生活を送ることが大切です。

精神科医

精神障害者手帳の等級判定は、都道府県や政令指定都市の精神保健福祉センターが行っています。

診断書の内容をもとに総合的に判断されるため、同じ診断名でも症状や生活状況によって等級が異なることがあります。

精神障害者保健福祉手帳とは

精神障害者保健福祉手帳(以下、精神障害者手帳)は、精神疾患を持つ方の社会復帰と自立、社会参加の促進を図ることを目的として、一定の精神障害があると認められた方に交付される手帳です。「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」(精神保健福祉法)に基づいて1995年に創設されました。

精神障害者手帳の対象となる精神疾患

精神障害者手帳の対象となるのは、「精神疾患を有する者であって、精神障害のため長期にわたり日常生活又は社会生活への制約がある者」とされています。具体的には、以下のような精神疾患が対象となります。

  • 統合失調症
  • うつ病・双極性障害などの気分障害
  • てんかん
  • 発達障害(自閉スペクトラム症、注意欠如多動症など)
  • 高次脳機能障害
  • ストレス関連障害(適応障害、PTSDなど)

精神障害者手帳の申請には、精神疾患の初診日から6ヶ月以上経過していることが条件です。これは、症状の安定性や継続性を確認するためのものです。

精神保健福祉士

障害者手帳の種類

日本の障害者手帳制度には、主に以下の3種類があります。障害の種類によって申請する手帳が異なります。

手帳の種類 対象となる障害 等級区分
身体障害者手帳 視覚、聴覚、肢体不自由、内部障害など 1級〜6級
療育手帳 知的障害 重度(A)、その他(B)など(自治体により異なる)
精神障害者保健福祉手帳 統合失調症、うつ病、発達障害など 1級〜3級

手帳と障害年金の違い

精神障害者手帳と障害年金は、どちらも精神障害を持つ方を支援する制度ですが、目的や内容に違いがあります。

  • 精神障害者手帳:社会参加の促進や各種サービスの利用を目的としています。税金の控除や公共料金の割引など、様々な福祉サービスを受けるための「証明書」としての役割があります。
  • 障害年金:障害によって働けない、または働きにくい状態になった場合の所得保障を目的としています。定期的に一定額のお金が給付される制度です。

障害年金は障害の程度によって1級、2級、3級に分かれていますが、手帳の等級と必ずしも一致するわけではありません。障害年金は就労能力の喪失に焦点を当てているのに対し、手帳は日常生活や社会生活全般における制約を評価しているためです。

精神障害者手帳の役割と意義

精神障害者手帳は単なる「障害の証明」にとどまらず、以下のような重要な役割と意義を持っています。

  • 社会参加の促進:各種の支援やサービスを利用することで、社会参加の機会が広がります。
  • 経済的負担の軽減:税金の控除や公共料金の割引などにより、経済的な負担が軽減されます。
  • 就労機会の拡大:障害者雇用枠での就職が可能になり、就労の選択肢が広がります。

精神障害者手帳は「レッテル」ではなく「権利証」です。手帳の取得によって社会的なスティグマを恐れる方もいますが、自分らしく生きるための支援を受ける権利を行使するための重要なツールと考えることが大切です。

精神科医

精神障害者手帳の取得は強制ではなく、あくまで本人の意思に基づいて申請するものです。自分の状況や必要性に応じて、メリットとデメリットを検討した上で取得を決めることが大切です。

精神障害者保健福祉手帳の等級別メリット

精神障害者保健福祉手帳(以下、精神障害者手帳)は、等級によって受けられるサービスや支援内容が異なります。ここでは各等級別に受けられる主なメリットを解説します。障害の程度が重い1級の方が受けられる支援が最も手厚く、3級になるにつれて支援の範囲や金額が変わります。

1級で受けられる支援・サービス

精神障害者手帳1級をお持ちの方は、最も手厚い支援を受けることができます。主な支援内容は以下の通りです。

  • 所得税の障害者控除:40万円(特別障害者控除)
  • 住民税の障害者控除:30万円(特別障害者控除)
  • NHK放送受信料の減免:障害のある方が世帯主でNHK契約者の場合、半額免除
  • 自動車税の控除:環境性能割+種別割

1級の方は特別障害者控除の対象となるため、税金面での優遇措置が最も大きいのが特徴です。また、多くの自治体では1級の方を対象とした医療費助成制度も設けられています。

ファイナンシャルプランナー

出典:

2級で受けられる支援・サービス

精神障害者手帳2級をお持ちの方は、1級と比べると控除額などは少なくなりますが、依然として様々な支援を受けることができます。主な支援内容は以下の通りです。

  • 所得税の障害者控除:27万円
  • 住民税の障害者控除:26万円
  • 新マル優制度:預貯金等の利子が非課税(元本350万円まで)

2級では、自治体によって1級と同様のサービスを受けられる場合もあります。特に医療費助成については、多くの自治体で2級までが対象となっていることが多いです。

3級で受けられる支援・サービス

精神障害者手帳3級は最も軽度の区分ですが、それでも様々な支援やサービスを受けることができます。主な支援内容は以下の通りです。

  • 所得税の障害者控除:27万円(2級と同額)
  • 住民税の障害者控除:26万円(2級と同額)
  • 新マル優制度:預貯金等の利子が非課税(元本350万円まで)

3級でも税金控除は2級とほぼ同じ水準です。精神障害は外見からはわかりにくいため、手帳があることで必要な配慮を受けやすくなります。軽度でも取得するメリットは大きいでしょう。

精神保健福祉士

等級に関係なく受けられる共通のサービス

精神障害者手帳の等級に関わらず、手帳を持っていることで受けられる共通のサービスも多くあります。主な共通サービスは以下の通りです。

  • 障害者雇用枠での就職機会:障害者手帳があれば、等級に関わらず障害者雇用枠での就職活動が可能
  • 公共施設の利用料割引:美術館、博物館、動物園などの入場料割引
  • 航空運賃の割引:国内線の航空運賃が3〜5割引(航空会社による)
  • 携帯電話料金の割引:各社の障害者向け割引サービス
地域による支援の例 内容 対象等級
都営交通無料乗車券 都営地下鉄・バス等が無料で利用可能(東京都) 全等級
タクシー料金助成 タクシー券の交付や料金の一部助成 主に1級・2級(自治体による)

精神障害者手帳のメリットは、単に経済的な支援だけでなく、社会参加を促進し、必要な配慮を受けやすくするという点にもあります。等級に関わらず、自分の状況に合わせて利用できるサービスを活用することで、より充実した日常生活を送ることができるでしょう。

等級に関わらず、自分の状況に合わせて利用できるサービスを活用することで、より充実した日常生活を送ることができるでしょう。

精神障害者保健福祉手帳の経済的メリット

精神障害者保健福祉手帳(以下、精神障害者手帳)を取得することで、様々な経済的メリットを受けることができます。これらの経済的支援は、精神疾患を抱える方の生活を経済面から支えるための重要な制度です。ここでは、税金控除や公共料金の割引など、具体的な経済的メリットについて解説します。

税金控除(所得税・住民税)

精神障害者手帳をお持ちの方は、所得税と住民税において障害者控除を受けることができます。この控除により、納税額を軽減できるため、手取り収入が増加します。

区分 所得税控除額 住民税控除額 対象
特別障害者控除 40万円 30万円 精神障害者手帳1級
障害者控除 27万円 26万円 精神障害者手帳2級・3級

税金の控除は申告しないと受けられません。手帳を持っているだけでは自動的に適用されないので、必ず手続きをしましょう。会社員の方は年末調整で、自営業の方は確定申告で手続きできます。

税理士

公共料金の割引

精神障害者手帳をお持ちの方は、様々な公共料金の割引や減免を受けることができます。日常的に発生する費用が軽減されるため、家計の負担軽減に大きく貢献します。

  • NHK受信料の減免:精神障害者手帳1級をお持ちの方が世帯主で受信契約者の場合、半額免除。世帯全員が市町村民税非課税の場合は全額免除。
  • 携帯電話料金の割引:大手携帯電話会社(ドコモ、au、ソフトバンク)では、基本使用料の割引や各種手続き手数料の無料化などのサービスを提供しています。

交通機関の運賃割引

移動にかかる費用も、精神障害者手帳をお持ちの方は割引が受けられる場合が多くあります。特に通院や通勤で頻繁に利用する方にとっては大きな経済的メリットとなります。

  • 鉄道・バス:地下鉄や市営バスなど自治体が運営する交通機関では割引や無料パスが発行される場合があります。
  • タクシー:多くのタクシー会社で運賃の1割引が適用されます。
  • 航空運賃:国内線に限り、多くの航空会社で3~5割引が実施されています。

その他の割引サービス

日常生活で利用する様々な施設やサービスでも、精神障害者手帳があれば割引を受けられることが多くあります。

  • 公共施設:美術館、博物館、動物園、水族館などの入場料が割引または無料になる場合があります。
  • 映画館:多くの映画館で精神障害者手帳をお持ちの方と付添者1名が1,000円程度の割引料金で鑑賞できます。
  • テーマパーク:東京ディズニーリゾートやユニバーサル・スタジオ・ジャパンなど、多くの施設で障害者割引が適用されます。

医療費の助成

精神障害者手帳をお持ちの方は、医療費の助成を受けられる場合があります。特に精神疾患の治療は長期にわたることが多いため、医療費の負担軽減は大きな経済的メリットとなります。

  • 自立支援医療(精神通院医療):精神疾患の治療のために通院する場合、医療費の自己負担が原則1割になります。
  • 心身障害者医療費助成制度:自治体によって実施されている制度で、医療費の自己負担分の一部または全部が助成されます。

精神障害者手帳の経済的メリットは多岐にわたり、日常生活のあらゆる場面で支援を受けることができます。これらの経済的支援を上手に活用することで、精神疾患を抱えながらも安定した生活を送るための助けとなるでしょう。

精神障害者保健福祉手帳の就労支援

精神障害者保健福祉手帳(以下、精神障害者手帳)を持つことで、就労に関する様々な支援やサービスを受けることができます。これらの支援は、精神障害のある方が自分らしく働き、社会参加を実現するための重要な制度です。この章では、精神障害者手帳を活用した就労支援の内容や制度について解説します。

障害者雇用枠での就職

精神障害者手帳を持っていると、障害者雇用枠で就職することができます。これは「障害者雇用促進法」に基づく制度で、一定規模以上の企業に障害者雇用を義務付けているものです。

企業区分 法定雇用率(2025年現在)
民間企業(従業員43.5人以上) 2.5%
国、地方公共団体 2.8%

障害者雇用枠での就職の主なメリットは以下の通りです。

  • 合理的配慮を受けやすい:障害の特性に応じて、労働時間の調整や業務内容の調整、通院のための休暇取得などの配慮を受けやすくなります。
  • 採用選考で有利になる可能性:企業が法定雇用率達成のために障害者採用を積極的に行っているため、一般枠よりも採用される可能性が高まる場合があります。

障害者雇用枠での就職は、一般雇用枠に比べて採用のハードルが低くなることがあります。また、企業側も障害特性に配慮した業務内容や労働環境を整えることが多いので、自分のペースで働きやすい環境が得られやすいのが大きなメリットです。

就労支援カウンセラー

出典:

就労支援サービスの利用

精神障害者手帳を持っていると、障害者総合支援法に基づく様々な就労支援サービスを利用することができます。主な就労支援サービスには以下のようなものがあります。

  • 就労移行支援:一般企業への就職を目指す障害のある方に、就労に必要な知識・能力の向上のための訓練や、就職活動のサポート、就職後の職場定着支援などを提供します。
  • 就労継続支援A型(雇用型):一般企業での就労が困難な方に、雇用契約を結んで働く場を提供します。
  • 就労継続支援B型(非雇用型):一般企業での就労が困難な方に、雇用契約を結ばずに働く場を提供します。

職場での合理的配慮

「障害者差別解消法」と「改正障害者雇用促進法」により、企業は障害のある従業員に対して「合理的配慮」を提供することが義務付けられています。精神障害者手帳を持っていると、職場で必要な配慮を受けやすくなります。

合理的配慮の具体例としては、以下のようなものがあります。

  • 勤務時間の配慮:短時間勤務、フレックスタイム制の適用、通院のための休暇取得など
  • 業務内容の調整:障害特性に合わせた業務の選定、業務量の調整など
  • 作業環境の調整:個室や仕切りのある座席の提供、静かな環境の確保など

ハローワークなどの公的支援機関の活用

精神障害者手帳を持っていると、ハローワークなどの公的就労支援機関の専門的なサービスを受けることができます。

  • ハローワーク:障害者専門の窓口があり、障害者向けの求人紹介や職業相談、職業紹介などのサービスを提供しています。
  • 地域障害者職業センター:障害者職業カウンセラーによる専門的な職業相談、職業評価、職業準備支援、ジョブコーチ支援などのサービスを提供しています。
  • 障害者就業・生活支援センター:就業面と生活面の両方から一体的な支援を行っています。

精神障害者手帳を活用した就労支援は、就職前の準備から就職後の定着まで、幅広くサポートしてくれます。自分の状況や希望に合わせて、これらの支援制度を積極的に活用することで、より充実した職業生活を送ることができるでしょう。

精神障害者保健福祉手帳取得のデメリット

精神障害者保健福祉手帳(以下、精神障害者手帳)の取得には多くのメリットがある一方で、一部のデメリットや懸念点も存在します。手帳取得を検討される際には、これらの点も理解した上で判断することが大切です。ここでは、精神障害者手帳取得に関して考えられるデメリットや懸念点について解説します。

プライバシーの懸念

精神障害者手帳の取得に関して最も多く挙げられる懸念は、プライバシーに関するものです。精神疾患に対する社会的なスティグマ(偏見)が依然として存在する中、手帳の取得によって精神障害があることが周囲に知られることを心配する方は少なくありません。

  • 職場での開示の問題:障害者雇用枠で就職する場合や、職場で合理的配慮を求める場合には、手帳の存在を会社に伝える必要があります。
  • 周囲の人の反応への不安:家族や友人、同僚などに精神障害者手帳を持っていることが知られた場合の反応を懸念する方もいます。

手帳の取得自体は個人情報として厳重に管理されていますので、あなたが積極的に開示しない限り、周囲に知られることはありません。ただし、手帳を使って各種サービスを利用する際には、提示する必要があるため、状況によっては精神障害があることが周囲に分かる可能性はあります。

精神保健福祉士

更新手続きの負担

精神障害者手帳は永続的に有効なものではなく、2年ごとに更新手続きが必要です。この更新手続きには、診断書の取得や申請書の提出など一定の手間と費用がかかります。

  • 診断書取得の負担:更新のたびに医師の診断書が必要となり、その取得には費用(5,000円〜10,000円程度)がかかります。
  • 手続きの手間:更新のためには、市区町村の窓口に出向いて申請書を提出する必要があります。
  • 更新忘れのリスク:更新を忘れたり遅れたりすると、一時的にサービスが受けられなくなる可能性があります。

心理的な抵抗感

精神障害者手帳の取得にあたっては、心理的な抵抗感を持つ方も少なくありません。これは社会的なスティグマだけでなく、自己認識に関わる問題でもあります。

  • 自己認識の問題:「障害者」というラベルを自分に付けることへの抵抗感があります。
  • 症状の一時性と手帳の必要性:特にうつ病や適応障害など、回復が見込まれる疾患の場合、「いずれ良くなるのに手帳が必要なのか」という疑問を持つことがあります。

「障害」という言葉にネガティブなイメージを持つ方は多いですが、障害者手帳は単に「社会的な支援が必要な状態である」ことを証明するものです。手帳の取得は自分自身の価値を下げるものではなく、必要な支援を受けて自分らしく生きるための選択肢の一つと考えることができます。

精神科医

手帳を返還したい場合

精神障害者手帳を取得した後、症状が改善したり、ライフスタイルが変わったりして、手帳が不要になった場合は返還することが可能です。手帳の返還は比較的簡単な手続きで行うことができます。市区町村の窓口に手帳を持参し、返還の意思を伝えれば手続きが完了します。

精神障害者手帳の取得にはこれらのデメリットや懸念点が存在する一方で、多くのメリットもあります。最終的には、精神障害者手帳は自分らしく生きるための「ツール」の一つであり、取得するかどうかは個人の自由な選択に委ねられています。

最終的には、精神障害者手帳は自分らしく生きるための「ツール」の一つであり、取得するかどうかは個人の自由な選択に委ねられています。

精神障害者保健福祉手帳の申請方法

精神障害者保健福祉手帳(以下、精神障害者手帳)の申請は、比較的シンプルな手続きですが、必要書類の準備や申請先の確認など、いくつかのステップが必要です。ここでは、申請に必要な書類や手続きの流れについて解説します。

申請に必要な書類

精神障害者手帳を申請する際には、以下の書類が必要となります。事前に準備しておくと、申請手続きがスムーズに進みます。

  • 申請書:市区町村の窓口で入手するか、自治体のウェブサイトからダウンロードできる場合があります。
  • 診断書:精神保健指定医または精神障害の診断・治療に従事する医師が作成したものが必要です。初診日から6ヶ月以上経過していることが条件です。
  • 本人の写真:縦4cm×横3cmの顔写真(原則として申請前6ヶ月以内に撮影したもの)が必要です。
  • 本人確認書類:マイナンバーカード、運転免許証、健康保険証などの身分証明書が必要です。

なお、精神障害を支給事由とする障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)を受給している方は、診断書の代わりに「年金証書の写し」と「直近の年金振込通知書の写し」を提出することで申請が可能です。

診断書の取得にはおよそ5,000円〜10,000円程度の文書料がかかります。また、医療機関によっては診断書の作成に1〜2週間ほどかかる場合もあるので、余裕を持って依頼しましょう。障害年金を受給している方は、診断書を用意する手間と費用を省くことができるのでおすすめです。

医療ソーシャルワーカー

診断書の取得方法

精神障害者手帳の申請において、最も重要な書類の一つが「診断書」です。診断書は、精神科や心療内科など、精神疾患の治療を受けている医療機関の主治医に依頼します。てんかんや発達障害、高次脳機能障害などの場合は、神経内科や小児科など、専門の医師が作成した診断書でも申請可能です。

診断書は手帳の等級判定に大きく影響するため、日頃の症状や生活上の困難について、主治医に具体的に伝えておくことが重要です。特に「生活能力の状態」の項目は、等級判定の大きな要素となります。

申請の流れと手続き

精神障害者手帳の申請から交付までの一般的な流れは以下の通りです。

  1. 必要書類の準備:診断書や写真など、必要な書類を揃えます。
  2. 申請窓口での手続き:お住まいの市区町村の障害福祉課(名称は自治体によって異なる場合があります)に申請書類を提出します。
  3. 審査:提出された書類は都道府県・政令指定都市の精神保健福祉センターに送られ、審査が行われます。
  4. 交付:審査の結果、手帳の交付が決定したら、市区町村から連絡があります。指定の窓口で手帳を受け取ります。

申請から交付までにかかる期間は、自治体によって異なりますが、一般的には1~3ヶ月程度です。申請時期によっては、さらに時間がかかる場合もあります。

精神障害者手帳の申請は、必要な書類を揃えれば比較的シンプルな手続きです。申請に不安がある場合は、主治医や医療機関のソーシャルワーカー、自治体の窓口などに相談しながら進めることをお勧めします。

精神障害者保健福祉手帳の更新と等級変更

精神障害者保健福祉手帳(以下、精神障害者手帳)は永続的に有効なものではなく、2年ごとに更新が必要です。また、症状の改善や悪化に伴い、等級の変更を申請することも可能です。ここでは、精神障害者手帳の更新手続きの方法や時期、等級変更の申請方法について解説します。

更新手続きの方法と時期

精神障害者手帳の有効期限は、交付日から2年間です。継続して手帳を利用するためには、期限が切れる前に更新手続きを行う必要があります。更新手続きは、有効期限の3ヶ月前から申請可能です。

有効期限が近づいてきたら、早めに更新手続きを始めることをお勧めします。診断書の取得には時間がかかることもありますし、申請から交付までに1~3ヶ月程度かかる場合もあります。手帳の有効期限は手帳に記載されているので、定期的に確認しておくと良いでしょう。

精神保健福祉士

更新手続きに必要な書類は、初回申請とほぼ同じです。主な必要書類は以下の通りです。

  • 更新申請書:市区町村の窓口で入手するか、自治体のウェブサイトからダウンロードできる場合があります。
  • 診断書:精神保健指定医または精神障害の診断・治療に従事する医師が作成したものが必要です。
  • 本人の写真:縦4cm×横3cmの顔写真(申請前6ヶ月以内に撮影したもの)が必要です。
  • 現在使用している手帳:更新時には現在の手帳を持参します。

更新時にも等級の審査が行われるため、症状の変化によって等級が変わる可能性があります。

症状が改善している場合は等級が下がることもありますし、悪化している場合は上がることもあります。

等級変更の申請方法

精神障害者手帳の有効期限内でも、症状に大きな変化があった場合には、等級変更の申請をすることができます。特に症状が悪化して現在の等級よりも重い等級に該当すると思われる場合は、速やかに等級変更の申請を検討しましょう。

等級変更の申請方法は、基本的に更新手続きと同じです。以下の書類が必要となります。

  • 等級変更申請書:市区町村の窓口で入手できます。
  • 新たな診断書:現在の症状を反映した新しい診断書が必要です。
  • 本人の写真:縦4cm×横3cmの顔写真。
  • 現在使用している手帳:等級変更が認められた場合、新しい手帳と交換になります。

症状が悪化して日常生活や社会生活への影響が大きくなっている場合は、等級変更を検討する価値があります。等級が上がることで受けられる支援やサービスが増える可能性があります。まずは主治医に相談してみることをお勧めします。

精神科医

手帳を返還したい場合

精神障害者手帳は、症状が改善した場合や、何らかの理由で手帳が不要になった場合には、自主的に返還することができます。手帳の返還は義務ではなく、本人の意思に基づいて行うものです。

手帳を返還したい場合は、市区町村の障害福祉課窓口に、手帳を返還したい旨を伝え、現在所持している手帳を提出します。窓口で返還届などの書類に記入すれば手続きは完了です。

手帳を返還すると、手帳によって受けていた各種サービスや支援が受けられなくなります。将来的に再度手帳が必要になる可能性がある場合は、有効期限が切れるのを待って更新しないという選択肢もあります。

よくある質問

精神障害者保健福祉手帳(以下、精神障害者手帳)に関して、多くの方が抱える疑問や不安について、よくある質問とその回答をまとめました。手帳の取得を検討されている方や、すでに取得されている方の参考になれば幸いです。

手帳を取得すると給料が下がる?

精神障害者手帳を取得しても、それだけを理由に給料が下がることはありません。「障害者差別解消法」や「障害者雇用促進法」により、障害を理由とした不当な差別的取扱いは禁止されています。給与や昇給に関して障害のない人と不当な差をつけることは、法律違反となります。

手帳を取得したことで給料が下がるということは基本的にはありません。ただし、障害に配慮した労働時間の短縮や業務内容の調整によって労働時間が減った場合は、それに応じて給与が変わることはあり得ます。

社会保険労務士

職場に手帳取得を伝える義務はある?

精神障害者手帳を取得したことを職場に伝える法的な義務はありません。手帳の取得や開示は個人の自由です。プライバシーに関わる情報として、開示するかどうかは自分で判断できます。

ただし、以下のような場合は開示を検討する価値があります。

  • 障害者雇用枠で就職する場合:障害者雇用枠で就職する場合は、手帳の提示が必要です。
  • 合理的配慮を求める場合:通院のための休暇や業務内容の調整など、障害に応じた配慮を職場に求める場合は、手帳の存在を伝えることで正当な配慮を受けやすくなります。

障害年金と手帳は別々に申請できる?

はい、精神障害者手帳と障害年金は別々の制度であり、それぞれ独立して申請することができます。どちらか一方だけを申請することも可能ですし、両方を申請することも可能です。

すでに障害年金を受給している場合、その証書を提示することで、診断書なしで精神障害者手帳を申請できることがあります。この場合、障害年金の等級に応じた手帳の等級が認定されます。

3級でも障害者雇用枠で就職できる?

はい、精神障害者手帳3級をお持ちの方でも、障害者雇用枠での就職が可能です。障害者雇用促進法では、手帳の等級に関わらず、精神障害者手帳を持つすべての方を障害者雇用率の算定対象としています。

3級の方は比較的症状が安定していることも多く、企業からのニーズも高いです。障害者雇用枠での就職を検討される場合は、ハローワークの専門窓口や就労移行支援事業所などに相談されることをお勧めします。

就労支援カウンセラー

手帳の診断書はどの医師に書いてもらえばいい?

精神障害者手帳の診断書は、原則として精神保健指定医または精神障害の診断・治療に従事する医師(精神科医や心療内科医など)に作成してもらう必要があります。疾患の種類によっては、てんかんは神経内科医、発達障害は小児科医、高次脳機能障害は脳神経外科医など、専門の医師が作成することも可能です。

精神障害者手帳に関するその他のご質問は、お住まいの市区町村の障害福祉課窓口、精神保健福祉センター、または主治医・医療機関のソーシャルワーカーなどに相談することをお勧めします。

まとめ

精神障害者保健福祉手帳は、精神疾患を持つ方の社会参加と自立を支援するための重要なツールです。等級(1級~3級)に応じて様々な支援やサービスを受けることができ、税金控除や公共料金割引などの経済的メリット、障害者雇用枠での就職機会など多くのメリットがあります。

手帳の取得・更新には診断書などの書類が必要で、2年ごとの更新手続きが必要です。プライバシーの懸念などのデメリットもありますが、自分の状況に合わせて活用することで、精神疾患があっても充実した生活を送る助けとなるでしょう。

手帳は支援を受けるための「権利証」であり、その人の価値を決めるものではありません。必要な支援を積極的に活用して、自分らしい生活を実現するための一助としてください。

精神保健福祉士

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