公開日:2025.05.28 最終更新日:2025.05.30
オープン就労とは?メリット・デメリットと適性がある人の特徴
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- このコラムのまとめ
- オープン就労は障害を開示して働く形態で、特性に合わせた配慮を受けながら働くことができます。障害者雇用枠での応募が一般的で、精神的負担の軽減や職場定着率の向上等のメリットがあります。デメリットとしては給与水準が低めで、職種選択肢が限られることが挙げられます。自分の障害特性や希望する働き方に合わせて選択することが重要です。
もくじ
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オープン就労の基本知識
オープン就労とは、自分の障害を企業に開示して就職活動や就労を行うことです。障害者雇用枠での就労が一般的ですが、一般雇用枠でも障害を開示して働くケースもあります。
オープン就労とは?障害を開示して働く就労形態
オープン就労は、就職活動や職場で自分の障害について伝え、理解を求めながら働く形態です。障害の特性に合わせた配慮を受けられることが大きな特徴となります。
就労支援カウンセラー
オープン就労の特徴と条件
オープン就労の場合、基本的に障害者雇用に応募することになります。障害者雇用枠での就労には、障害者手帳の所持が条件となります。障害者手帳とは、障害がある人に交付される手帳のことで、これを所持することで障害者総合支援法に基づく様々な支援を受けることができます。
クローズ就労との違い
クローズ就労とは、病気や障害などを開示せずに就職活動・就労をすることです。オープン就労とクローズ就労の主な違いは、障害への配慮の受けやすさ、職場定着率、給与水準、求人数などの点にあります。障害者職業総合センターの報告では、障害を開示して就労するほうが職場定着率が高いという結果が出ています。
自分の障害特性や希望する働き方に合わせて、どちらが自分に合っているかを慎重に検討することが大切です。
オープン就労の5つのメリット
オープン就労には、障害のある方が長く安定して働き続けるための様々なメリットがあります。ここでは、主な5つのメリットを紹介します。
メリット①:障害特性に合わせた業務内容や配属先の配慮を受けられる
オープン就労では、自分の障害特性に合わせた業務内容や配属先への配慮を受けることができます。例えば、聴覚過敏がある場合は静かな環境での業務、ASDやADHDの方には過集中による疲労を防ぐための休憩時間の確保など、特性に応じた配慮が可能です。
メリット②:障害を隠す必要がなく精神的負担が軽減される
障害を開示することで「隠さなければならない」という精神的ストレスから解放されます。体調が悪化した場合でも正直に伝えやすく、安心して働くことができます。
メリット③:支援機関と職場が連携したサポートを受けられる
就労移行支援事業所などの支援機関と職場が連携したサポートを受けられるのも大きな利点です。定期面談や職場訪問を通じて職場定着率が約20%向上するというデータもあります。
出典:
メリット④:体調に合わせて勤務形態の調整がしやすい
その日の体調に合わせて勤務形態を調整しやすいのも重要なメリットです。短時間勤務への切り替えや、通院のための休暇取得がしやすくなります。
メリット⑤:職場定着率が比較的高い
上記のメリットが複合的に作用し、オープン就労は職場定着率が比較的高くなっています。長期間にわたって安定して働き続けることができるため、キャリア形成や生活の安定にもつながります。
オープン就労に向いている人の特徴
オープン就労とクローズ就労のどちらを選ぶべきか悩む方は多くいます。ここでは、オープン就労に特に向いている人の特徴を紹介します。
自分の障害特性を理解している人
オープン就労で成功するためには、自分自身の障害特性をしっかりと理解していることが重要です。自分の障害がどのように仕事に影響するのか、どのような場面で困難が生じやすいのかを把握している人は、必要な配慮を適切に伝えることができます。
就労支援カウンセラー
必要な配慮を明確に伝えられる人
自分に必要な配慮を具体的に説明でき、適切に要望を伝えられる人はオープン就労に向いています。例えば「騒がしい環境では集中力が低下するため、静かな場所での作業が効率的です」といった形で伝えられると、職場も対応しやすくなります。
サポートを受けながら働きたい人
就労支援機関や職場からのサポートを受けながら働きたいと考える方にとって、オープン就労は適した選択肢です。特に初めての就労や過去に職場での困難から離職経験がある方には、支援を受けられる環境が安心につながります。
職場定着を最優先したい人
長く安定して働き続けることを最優先したい方には、オープン就労が適しています。配慮を受けながら無理なく働くことで、職場定着率を高めることができます。
オープン就労で成功するためのポイント
オープン就労を選択した場合、単に障害を開示するだけでなく、職場での適応や長期的な就労継続のために意識すべきポイントがあります。
自己理解を深めておく
オープン就労で成功するためには、自分の障害特性についての理解を深めておくことが不可欠です。医療機関での説明を受けたり、就労移行支援事業所のプログラムを通じて、自分の特性と仕事の関係を探りましょう。
精神保健福祉士
合理的配慮の申請方法を知っておく
障害特性に基づいた「合理的配慮」を効果的に求めるためには、必要な配慮を具体的かつ現実的に説明できるようにしておきましょう。2024年4月からは民間事業者による合理的配慮の提供が法的義務となります。
出典:
支援機関を活用する
就労移行支援事業所や障害者就業・生活支援センターなどの支援機関を積極的に活用しましょう。就職前の準備から就職後の職場定着支援まで、包括的なサポートを受けることができます。
自己管理能力を高める
オープン就労であっても、自己管理能力を高めることは重要です。体調や気分の変化を記録し、ストレスサインを早期に認識する感覚を養いましょう。これにより、より安定した就労継続が可能になります。
オープン就労の3つの選択肢

オープン就労といっても、実際には複数の選択肢があります。障害を開示して働く場合、大きく分けて以下の3つの形態があり、それぞれに特徴やメリット・デメリットが異なります。
一般企業の「障害者雇用枠」で働く
最も一般的なオープン就労の形は、一般企業の障害者雇用枠で働く方法です。障害特性に配慮された業務内容や職場環境が整備されていることが多く、体調管理を重視した働き方が可能です。一方で、給与水準が一般枠より低いことや、業務内容が限定的になりがちという点があります。
一般企業の「一般雇用枠」で障害開示して働く
一般企業の一般雇用枠で応募し、選考過程や採用後に障害を開示して働く選択肢もあります。業務内容や職種の選択肢が広く、給与や待遇が比較的良いことが特徴です。ただし、障害者雇用枠ほどの手厚い配慮は期待できないこともあります。
障害者雇用コンサルタント
特例子会社で働く
特例子会社とは、障害者の雇用促進を目的として設立された企業です。障害者が働きやすい環境整備や業務設計がなされており、同じ障害を持つ仲間が多く孤立感が少ないのが特徴です。ただし、業務内容が限定的で給与水準が低めという傾向もあります。
オープン就労の4つのデメリット・注意点
オープン就労には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットや注意すべき点も存在します。就労形態を選択する際には、これらのデメリットも理解しておくことが大切です。
デメリット①:給与水準が比較的低い傾向にある
オープン就労、特に障害者雇用枠での就労では、一般雇用枠と比較して給与水準が低い傾向があります。厚生労働省の調査によると、障害者の月額平均給与は障害の種類によって異なりますが、一般労働者の平均給与と比較すると全体的に低い水準にあります。
デメリット②:求人数が限られている
障害者雇用枠の求人は一般雇用枠と比較すると数が少なく、希望する業種や職種、勤務地などの条件に合った求人を見つけることが難しい場合があります。ただし、法定雇用率の引き上げにより、今後も求人数は増加していく見込みです。
就労支援専門家
デメリット③:職種の選択肢が少ない
障害者雇用枠の求人は、定型的な一般事務や軽作業、データ入力などの業務が多く、専門性の高い職種や創造性を必要とする職種の選択肢は限られています。
デメリット④:キャリアアップの機会が限定的な場合がある
オープン就労では、キャリアアップの機会が一般雇用に比べて限定的になる場合があります。配属部署や担当業務が固定されやすく、管理職への昇進機会も少ないことがあります。
オープン就労とクローズ就労の選び方
オープン就労(障害を開示して働く)とクローズ就労(障害を開示せずに働く)は、どちらが「正解」というわけではなく、それぞれの状況や希望に合わせて選択すべきものです。
自分の障害の程度と特性から考える
就労形態を選ぶ際に最も重要な要素の一つが、自分の障害の程度や特性です。障害による困難さが業務に大きく影響する場合や、定期的な通院が必要な場合はオープン就労が適している可能性が高いでしょう。
精神科医
希望する働き方から選ぶ
体調管理を最優先したい、柔軟な勤務形態を希望するならオープン就労が、より高い給与や幅広い職種から選びたい場合はクローズ就労が向いているかもしれません。
将来のキャリアプランを踏まえて判断する
特定の専門分野でスキルを磨きたい場合はクローズ就労が、安定した環境で長く働き続けたい場合はオープン就労が適している可能性があります。
第三者の意見を参考にする
主治医や就労支援機関のスタッフなど、専門家の客観的な意見を参考にすることも重要です。自分では気づかない要素に気づくことができるでしょう。
オープン就労に関するよくある質問
オープン就労について検討する際、多くの方が同じような疑問や不安を抱えています。ここでは、よく寄せられる質問とその回答をまとめました。
Q1. 障害者手帳の取得方法は?
障害者手帳は障害の種類によって異なり、取得方法も異なります。一般的な流れは、主治医に診断書を作成してもらい、居住地の市区町村役場に申請するというものです。申請から交付までは1〜3ヶ月程度かかります。
Q2. オープン就労とクローズ就労、どちらが自分に合っているか相談するには?
就労移行支援事業所、障害者就業・生活支援センター、ハローワークの専門援助部門などで相談できます。これらの機関では、障害特性に合わせた助言や支援を受けることができます。
就労支援コーディネーター
Q3. 就労後に障害開示の有無を変更することはできる?
就労後に障害開示の有無を変更することは可能です。クローズから開示へ変更する場合は、開示のタイミングと方法を慎重に検討しましょう。反対に、オープンからクローズへの変更は転職を機に行うことが一般的です。
Q4. 障害者雇用枠でも昇進やキャリアアップはできますか?
企業の方針や制度によって異なりますが、障害者雇用枠でも昇進やキャリアアップの可能性はあります。面接時に長期的なキャリアパスについて質問してみるとよいでしょう。
まとめ:自分に合った就労形態を選ぼう
オープン就労とクローズ就労には、それぞれにメリットとデメリットがあります。どちらが「正解」というわけではなく、自分の障害特性や希望する働き方、キャリアプランなどに合わせて選択することが重要です。
就労支援カウンセラー
就労形態は固定的なものではなく、経験や成長に合わせて変えていくことも可能です。専門家のサポートを活用しながら、自分に合った働き方を見つけてください。
障害があっても、自分らしく働ける環境で能力や個性を活かしていくことができます。